オリンピックはもうやめようぜ

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 東京オリンピックの開催費用について、東京都と国で負担額について争っていると思っていたら、それが地方に飛び火して大炎上しているらしい。

 2020年の東京大会は「コンパクトでお金のかからない大会」を売りに誘致が決まったのだが、その後はあれよあれよという間に予算が膨張し、東京都の当初予算をはるかに超過するものになってしまった。そこで競技を開催する周辺自治体にも、開催費用の一部負担を求めようという話になっている。

 これについて周辺自治体は、「五輪に合わせて競技場を改修する場合、大会後も残る施設については地元の資産になるので費用を負担してもいいよ。でも五輪のためだけに設置して大会後は取り払ってしまう仮設の施設については、運営側が費用を全額負担するという約束だったよね」と言っている。

 これは「東京大会」のために会場を貸す他県にしてみれば、当然の言い分だろうと思う。

 しかし五輪開催予算が膨らんだことで、東京都はこれについても「仮設費用についても周辺自治体で費用負担できないか」と言いだしたわけだ。でもそれって、どうも筋違いな話だよね。

 東京都が自分の判断でオリンピックを誘致し、自分たちの責任で組織委員会を作り、自分たちの責任で予算の膨張を許しておいて、なぜ当初予算から超過した費用の負担を他の自治体に求めるんだろう。どういう理屈で、そんなことが可能になるんだろうか。

 《東京都》主催の《東京オリンピック》なのだ。オリンピックは多数の観客動員、放送権料、関連グッズなどの売り上げが見込める、世界最大のスポーツイベントだ。それでも東京都が保有する会場が足りなくて、周辺自治体から会場を借りることはあり得るだろう。その時、会場を保有する自治体に対して使用料を支払うことはあっても、「費用負担をしろ」と言うのは明らかに筋が違う。

 東京都は会場負担をする他の自治体を「準開催都市」などと呼び始めたようだが、そもそも会場の準備が自分たちの手に余るから、他県にまで会場が分散しただけではないのか。

 僕は今年の春まで東京都民だったが、今は愛知県民であり名古屋市民だ。今でも東京都民だったら、オリンピックや築地市場移転の問題で毎日イライラしていたと思う。今は他人ごとのようにこのことが語れてラッキーだわな……。(神奈川県・千葉・埼玉・宮城の人達も、この問題ではイライラしてるでしょうけどね。)

 しかし開催予算は見事に膨れ上がったものだ。開催が決まった最初は3,000億円ぐらいの予算だったのに、今では総額2兆円だと言っている。無茶苦茶だ。一連のニュースは世界中にも配信されていると思うが、他国のスポーツ関係者はこれを見てどう思うだろうか。

 オリンピックが開催国にとって、国威発揚の場だった時代がある。戦前のベルリンオリンピックはまさに国の威信をかけた国際スポーツイベントだったし、前回の東京五輪も高度経済成長時代を象徴する大イベントだ。オリンピックはその後、放映権料などが高騰して、開催国に莫大な利益を生み出すドル箱イベントになった。しかしその時代はそれほど長くは続かず、今では開催国にどれだけのメリットがあるのか……というものになっている。

 2020年の東京オリンピックは、開催費用が3,000億円だった頃から「それでもとが取れるのか?」と一部で言われていたのだ。この時点ではまだ「収支トントンか少し利益が出るはず。開催地は外国からの来場者もいるから、経済効果は計りしれない」などと言っていたわけだ。

 でも開催費用が2兆円に膨れ上がった今となっては、これでもとが取れると思っている人などどこにもいないだろう。今はもう赤字をどれだけ減らせるかという、きわめてネガティブな話になっている。赤字削減のための方法のひとつが、「周辺自治体での開催費用負担」だったのだ。

 2020年東京オリンピックにとって最大の功績は、「オリンピックはとんでもなく金がかかり、裕福さでは世界最大級の自治体である東京都ですら開催費用をまかないきれなかった」という惨憺たる結果を世界にアピールしたことかもしれない。これでもう、発展途上国はオリンピック開催に手を上げない。先進国も開催には手を上げない。オリンピック誘致のために世界中の都市が諸手を挙げる時代は、これで終わりになるに違いない。

 オリンピックを世界各地で持ち回り開催するのは、もうやめてもいいのではないだろうか。

 近代オリンピックは古代オリンピックに倣って、第1回大会はギリシャのアテネで開催された。近代オリンピックはその後、毎年開催地が移動して行くのだが、オリンピックのルーツである古代オリンピックは、開催地がギリシャのオリンピアで固定されていたのだ。

 施設の維持管理や費用負担のことを考えると、近代オリンピックもそろそろ場所固定に切り替えた方がいいと思う。オリンピックを名乗るなら、やはりギリシャのアテネあたりがいいだろうか。アテネは過去に3回オリンピックを開催した実績があるし、場所を固定してしまえば競技施設や選手村などの施設は恒久的に使えて運用コストは安くなる。

 冬季五輪は近代オリンピックの父・クーベルタン男爵の出身国であり、第1回冬季五輪が開催されたフランスのシャモニーあたりで固定してしまえばいいんだよ。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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