「最終的かつ不可逆的」とは何だ?

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写真:朝日新聞

 どうせまとまりっこないと思っていた慰安婦問題をめぐる日韓会談だが、どうやら外相同士の話し合いが合意に達したらしい。今回の合意によって、日韓双方が「この問題が最終的かつ不可逆的に解決される」とした意義は大きい。

 しかしこの「最終的かつ不可逆的な解決」には前提条件がある。記者発表によれば、それは次のようなものだ。

  • 韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこと。

 この約束が果たされなければ、両国間の合意は破棄される。日本から韓国の元慰安婦に対する「償い」としては、20年前にアジア女性基金が作られたことがあるが、これは「民間組織からの謝罪ではなく国家が謝罪すべきだ」という韓国世論の批判があって頓挫してしまった。今回は『日本政府の予算で資金を一括で拠出し』というところがミソなのだ。

 こうした合意によって、両国は『今後、国連等国際社会において、本問題について互いに批判することは控える』ことも約束している。これらを踏まえてマスコミの中には、「これで問題が蒸し返されることない」と評価しているところもあるのだが、それはどうだろうか……。

 例えば韓国の日本大使館前にある慰安婦像について、韓国政府は次のように述べている。

(2)韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体と話し合いを行い、適切なかたちで解決するよう努力する。

 努力するだけで、結果については責任を持たないのだ。日本政府側はこれで慰安婦像はなくなると楽観的に見ている人もいるようだが、韓国側は慰安婦像を作った団体に対して「あれって何とかなりませんか?」と話をすれば、一応の義務は果たしたことになるのだ。

 ましてや韓国の国外に韓国系の住民らが作っている慰安婦像について、韓国政府は何の権限も持っていないし、今回の合意の中にも含まれていない。

 また国際社会での慰安婦問題を使った日本批判についても、『批判することは控える』とは述べていても「批判しない」としたわけではない。何らかの問題があれば批判はまた再燃するだろう。

 韓国は政権交代のたびに前政権の決定を何度も覆してきた国だ。今回の合意は朴槿恵政権のもとでは有効かもしれないが、その後の政権に決定が継承されるかどうかはわからない。これで万事問題が解決したとは思わないほうがいいだろう。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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