「21世紀アメリカの喜劇人」を読む

21世紀アメリカの喜劇人 日本でもここ10年以上「お笑いタレントブーム」が続いているが、お笑いが好きなことでアメリカの方が10年も20年も先を行っている。テレビで売り出したコメディアンは映画に進出し、全米ヒットチャートに名を連ねるようなヒット作の半分はコメディ映画。ところがそうした映画の多くは日本に輸入されず、よくても怪しげな邦題を付けられてDVD市場へ一直線、ごく少数が例外的に劇場公開されるに留まっている。「邦画ブーム」だの「邦高洋低」などと言われる最近の映画興行界では、アメリカのコメディ映画が日本で公開される可能性はどんどん狭まるばかりなのだ。

 長谷川町蔵の「21世紀アメリカの喜劇人」はそんなアメリカのコメディ映画とコメディアンを、日本未公開の作品も含めて大々的に紹介したガイドブックだ。タイトルに『21世紀』とあるように、ここで紹介されているものの多くが21世紀の今、一番旬なコメディアンと映画作品、映画人たちになっている。初版発行は2013年3月だから、本が書かれていたのは2012年頃だろうか。アダム・サンドラー、ベン・ステイラー、ジャック・ブラック、ウィル・フェレルといった顔ぶれがこの本の中心だと言えば、扱われている「世代」がわかるに違いない。ジム・キャリーやエディ・マーフィ、さらにさかのぼってスティーブ・マーティンといった80年代から90年代のスターたちにも目配せしつつ、ここではそれ以降の若いコメディアンたちを、それ以前のコメディアンたちの系譜の中に歴史的に位置づけようとしている。

 2000年代以降のコメディ映画史を語るに当たり、若手俳優の登竜門となっているティーン・コメディの系譜の完成者としてジョン・ヒューズを取り上げ、その前後の歴史を俯瞰しながら肉付けしていくあたりがこの本の一番の見どころではないだろうか。これを読んでいると、ジョン・ヒューズの映画を「古典」として観直さなければならないのかなぁ……という気持ちになるのだ。

 かつて僕と同年代を含むそれより上の世代は、ビデオもDVDもほとんどない中で、年配の映画評論家たちが書く映画ガイドをむさぼるように読んで映画を勉強した。映画そのものを観ることなく、映画についてのガイドブックや解説書を読んで映画について学んだのだ。この本にはそうした、昔の映画ガイドブックと同じ匂いがする。何でも著者は小林信彦の「日本の喜劇人」を踏まえてこのタイトルにしたんだそうで、この著者もやはり僕と同じような世代で、同じような映画的素養の中から出てきた人なのだということがうかがえるのだ。

 というわけで全体的に面白く読めた本なのだが、この本の欠点、しかも致命的な欠点は、索引がまったくないことだ。こういう本は人名索引と作品名の索引があれば、資料としての使い勝手がとても増すのだけれど……。索引を作るのは面倒くさい。とても手間がかかる。手間がかかるということは、その分だけ書籍の制作費がかかってしまうわけだ。でもこの本は、索引がないことでとても損をしている。索引がないのなら、目次をもう少し充実させて、せめてどの章にどんな人が取り上げられているか程度のことはわかるようにしてほしかった。映画ガイドの部分についても、作品タイトルの一覧だけでもどこかにあればすごく役に立ったはずなのに。

 ところで以前なら文庫本で手軽に手に入った小林信彦の「日本の喜劇人」や「世界の喜劇人」は絶版になっているのですね……。和田誠の「お楽しみはこれからだ」シリーズもそうだけど、僕と同世代の映画ファンなら必ず目を通していたであろう古典的な映画本の多くが絶版になっている。まあ映画本の市場なんてその程度のものだということだろうか。でもこういうものは、やはり後世に残していってほしいな。それこそ電子書籍などの出番なんだろうけど。


 午前中に山梨を出て東京へ戻る。車だと2時間ぐらいだから、電車より少し早いのかな。荷物も大量に運べるし、自動車での移動も悪くはないのかも。ただし運転手は疲れるし、子供も退屈してしまう。その点は電車の方がまだマシなのか。

 帰宅して荷物をほどいた後、洗濯物を洗濯機に突っ込み、近所のカレー屋で昼食。その後は「やっぱり家がいいなぁ」と思いながら洗濯を干したりして過ごし、夕方から地元の神社で初詣。帰りに沖縄料理屋で簡単に食事。もうアルコールは避けてサンピン茶を飲んでました。ユニクロでヒートテックの靴下を買って帰宅。