超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃

 著者は大手広告代理店・博報堂で「ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー」をしている人物だ。博報堂というのは調査データを用いて市場に何らかのネーミングをするのに長けたところで、最近だと「さとり世代」や「マイルドヤンキー」も博報堂のブランドデザイン若者研究所が生み出した言葉であったりする。

 こうした言葉を博報堂が作り出すのは、そこに新たな購買層となる広大なマーケットがあると考えているからだろう。

「かつての若者はあれも欲しいこれも欲しいという欲望の中で購買の選択をしていたけれど、今の若者はそうじゃないんです。彼らはそうした欲望が希薄な《さとり世代》なんです。だからそこに物を売るには、これまでにない工夫が必要ですよ。博報堂は既にそのノウハウを持ってます!」

とか、

「かつては都市部の若者がさまざまな文化を生み出し、地方の若者はそれに追随するだけでした。でも今は活発な購買活動をしているのは地方の若者層です。彼らには一定の生活行動傾向があります。我々はそれを《マイルドヤンキー》と名付けました。マイルドヤンキー相手にどんどん物やサービスを売りましょう!」

の次にやって来たのが、

「かつては若者が一定の年齢になれば結婚すると思われていました。だから消費の牽引役は夫婦と子供のいるファミリー層ターゲットでよかったんです。でもこれからは独身者が増えます。我々はそれを《ソロ社会》と名付けました。これからはソロ男やソロ女に向けた、新しいマーケティング戦略が必要です!」

というものなのだと思う。

 まあそれ自体は悪いことではない。この著者は「独身者が増えて世の中大変だ!」と騒ぐわけではないし、「結婚させて子供を増やすにはどうすればいいか?」と言うわけでもない。データに基づいて「独身者は今後も増えていく。結婚は減るし、子供の数も減る」と言っているだけなのだ。だから年金が……とか、だから生活保障が……といった話はしない。単に「独身でも寂しくないし、それなりに楽しく生きられる世の中だよね」と現状追認しているだけだ。

 しかしこの徹底した現状追認ぶりが、むしろ清々しい。著者は「一人暮らしの人々が今後の社会では消費のボリュームを引き上げていく。だから一人暮らしの人向けの商品を開発して、一人暮らしをより便利で快適なものにしていくといいですよ」と、徹底して商売っ気たっぷりに語ってみせているだけだ。そして間違いなく、世の中はそちらの方向に向かっていく。

 かつて独身の男どもは、身の回りの世話をしてくれる「自分専用の母親」がほしくて結婚した。メシ作ってくれて、部屋の掃除してくれて、買物もしてくれて、ついでに夜のお相手もしてくれる。最高だ!

 でもそうした結婚はもう破綻している。高学歴で稼ぎの多い女性は、簡単には「理想の母親」を演じてくれない。この本の中でも紹介されているが、男性の年収が多くなるほど未婚率が低くなるのに対して、女性は逆に、年収が多くなるほど未婚率が高くなる。経済的に自立した女は、わざわざ結婚などしない。そして晩婚化の結果としてこだわりのライフスタイルを身に着けてしまった男たちも、わざわざそれを犠牲にして結婚しようとは思わない。

 男も女も、独身であることにメリットこそあれデメリットはひとつもない。世の中が「少子化で社会の活力が失われる」とか「社会保障が破綻する」などと言っても、そんなことは個々人には関係のないことなのだ。

 この本に書かれている「ソロ社会への希望」や「提言」のようなものには、僕は面白味を感じない。それより圧倒的に面白くて説得力があるのは、日本の人口の半分が独身になる「超・ソロ社会」が、否応なしにやって来ることをデータを交えながら論証していく部分にある。

 「50年後も日本の人口1億人を維持」とか「希望出生率1.8の実現」とか「合計特殊出生率を人口置換水準の2.07へ」などと寝ぼけたことを言っている人たちは(安倍首相のことですね)、この本の提示するリアルな未来をきちんと検証してみた方がいいと思う。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 読書

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