仏の教え ビーイング・ピース―ほほえみが人を生かす

ビーイング・ピース

 ベトナム出身の禅僧、ティク・ナット・ハンの代表的な著作のひとつ。アメリカ人に仏教を紹介するため英語で書かれている本だが、その日本語訳にもいろいろな工夫がある。それは本書の中で語られている仏教を、伝統的な仏教用語を用いずに訳すことだ。

 例えばパーリ語のbodhisattaを音写した漢訳が菩提薩埵(ぼだいさった)で、それを略して菩薩(ぼさつ)とするのが伝統的な仏教用語だ。しかし本書はそれを「決意の人」と訳す。

 サンガ(僧伽)は「共同体」であり、慈悲は「愛」であり、座禅は「座ってする瞑想」であり、仏は「目覚めた人」であり、般若は「理解」のこと、空は「分かれたものがない」だとされる。

 これはティク・ナット・ハンという人がそのように仏教を解説していると言うより、棚橋一晃という訳者の趣味が大きい。巻末に訳語の対照表が載っているが、これによれば英語でも菩提薩埵はBodhisattva(サンスクリット語の音写)であり、仏はBuddha、空はemptyなのだ。

 伝統的な仏教用語をあえて避けた言葉に置き換えることで、この本は日本人にとって身近なところにある仏教に、まったく新しい光を当てることになる。「こんな仏教もあるのか」「これも仏教なのか」という、新鮮な発見がある。

仏の教え ビーイング・ピース―ほほえみが人を生かす (中公文庫)
ティク・ナット ハン
中央公論新社
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投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 読書

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