非正規雇用で高度なサービスは維持できるか?

ドミノピザ

 宅配ピザ・チェーンのドミノピザで、クリスマス・イブの日に大きなトラブルが起きたらしい。ドミノピザ側からの詳しい説明はないが、大きな値引きキャンペーンを行っていつも以上に集中した客からの注文を、現場が捌ききれなくなったようだ。

 キャンペーンを行えば注文が増えるのはわかりきっている。そもそも注文増を期待してのキャンペーンなのだ。ならばそれに備えて、現場は受け入れ準備を進めておかなければならない。しかしドミノピザには、それができなかった。

 客からの予約数が店舗でさばける注文の規模を大きく超えてしまうことは、現場で予約を受けていた担当者にはわかっていたはずだ。しかしそれを断ることなく注文を受け続けたことで、現場のオペレーションが破綻してしまった。なぜ断らなかったのだろうか。おそらく現場には、予約注文を断る権限がなかったのだろう。

 客の予約が増えることがわかっていたなら、それに応じて多めの人員を配置すべきだった。しかしこれも実施できていなかったに違いない。宅配ピザチェーンの従業員はほとんどがパートやアルバイトだ。通常のシフトに入っている従業員でさえ、「その日は彼女とデートなんで」とか「その日は家族と過ごします」「少し早めに帰省します」などと言われれば、それを止めることはできない。

 「忙しいのがわかっているのに、自分の都合で休むなんてふざけんな!」と思っても、時給何百円かのアルバイトに業務に対する忠誠心を期待するのは無駄だろう。忙しいとわかっている日は、特別なボーナスを付けて他のシフトに入っている従業員にも応援を要請する程度のことしかできないはずだが、はたしてそうしたことすらしていたのかどうか? また仮にそうした要請をしたとして、それに応じる従業員がどれだけいたのかどうか?

 いずれにせよ「時間給×勤務時間」で賃金を払っている従業員が多い職場では、急な仕事量の増加に対処できないというのが今回の教訓ではないだろうか。これは大手宅配業者で、12月に入って大幅な輸送の遅延が起きているというニュースにも共通することだ。

 現状では日本中のどんなサービス業でも、働いている人達の賃金は最低賃金に毛の生えた程度に過ぎない。本来最低賃金というのは、どんな訓練もなしに働き始めたその日にもらえる給料であって、熟練の必要がない、誰でもできる簡単な仕事に与えられるものなのだ。しかし日本ではその賃金で働く従業員たちに、かなり高度なオペレーションを要求している。

 宅配ピサ・チェーンの給与が具体的にどの程度なのかは知らない。しかし最低賃金の倍は支払っていないはずだ。最適賃金が800円の地域なら、900円払えばかなり払っている方だろう。深夜帯などを除いた通常の勤務で、1,000円以上払うことはまずないと思う。この程度の賃金で、従業員に「この日は忙しくなるから必ず出てくれ」とは言えない。

 日本人サラリーマンはきわめて真面目だ。台風が来ようが大雪が降ろうが、決まった時間にきちんと会社に出社する。あらかじめ大きな気象変動が見込まれそうな日は、前日から会社に泊まり込んだり、近くのビジネスホテルに泊まって翌日に備えることもある。しかしこれをパートやアルバイトに期待することはできない。

 パートやアルバイトは、急に休んでもその分の「時間給×勤務時間」の給与を失うだけだ。それ以上のペナルティはないし、万が一にでもそこにペナルティを求めるような事業所があれば、それはブラック企業だ、ブラックバイトだと言われてしまう。(まあ実際にそうなんですけどね。)

 パートやアルバイトは平気で休む。休むことに抵抗感がない。年末の繁忙期にはどの業界も忙しいので、求人情報サイトには短期で高時給のアルバイトがいくらでも紹介されている。するとパートやアルバイトで働く人は、レギュラーの仕事を休んでこうした短期の仕事をするのだ。例えば宅配ピザ屋で忙しい年末もいつもと同じ時給900円で働くより、1週間だけでもおせちの工場や福袋のパッキングで時給1,100円の仕事をする方が効率がいいと考える。

 これは彼等が無責任なのではなく、そもそもパートやアルバイトはそういう雇用形態や雇用契約になっているのだ。それ以上のものを求めるなら、1時間いくらの時間給契約ではない、もっと別の雇用形態を考えるべきだろう。それは契約社員にすることかもしれないし、正社員にすることかもしれない。

 現在ネットでは、佐川急便の配送員が預かった荷物や台車を投げつける動画が話題になっている。こうしたことは、配送員がパートやアルバイトだからこそ起きるのではないだろうか。少なくともこの配送員は自分の仕事を愛していないし、務めている事業者に対する忠誠心もない。パートやアルバイトにそれを求めるのは意味がない。しょせん彼等は、1時間ナンボで自分の時間を切り売りしているに過ぎないのだ。

 日本のサービス業は世界一の品質だと言われているが、それは見えないところから少しずつ崩れていくと思う。今回ドミノピザや佐川急便で起きたのは、そのほんの前触れに過ぎないような気がする。

【追記】 佐川急便で荷物や台車を投げつけていた配達員は、その後の一部報道で「正社員」だと報じられていた。パートやアルバイトだから、仕事への愛情や会社への忠誠心が薄いというわけではないようだ。年末の繁忙期にパートやアルバイトでは手が回らないしわ寄せが、正社員の負担になっているということもあるのかなぁ……。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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