日本の労働生産性が上がらない理由

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 日本人の労働生産性が低いので何とかしなければ、という議論があるようだ。昨日のNHKニュースでも、「労働生産性 日本は主要7か国の中で最下位」という話題を紹介していた。労働生産性が低いために、日本では賃金が上がらない。仕事の効率を高めて生産性を上げれば、賃金も上昇するというのが一般的な考え方らしい。

 しかしこんなものはウソっぱちだろうと思う。労働生産性というのは、労働者1人あたりが生み出す物やサービスの「量」を意味しているわけではない。労働者1人あたりが生み出す「付加価値」を問題にしている。

 例えば労働者が同じ時間をかけて石鹸1個を作るとしても、それが高級石鹸として1個2千円で売れるのと、スーパーの安売り商品として1個60円で売られるのとでは、生み出される付加価値(=生産性)に大きな差が生じる。1個60円の石鹸を作っている工場でいくら労働者に「生産性を上げろ!」と発破をかけても、1個60円の石鹸は60円でしかない。むしろ現在の日本では労働者ががんばって増産に成功しても、企業は「1個60円の石鹸を40円に値引きすればもっと売れるかも」と考えるのではないだろうか。

 バブル崩壊から四半世紀にわたって日本人にこびりついたデフレマインドが、日本の労働生産性を押し下げているのだ。

 日本の労働生産性が低いのは、端的に言えば賃金が低く抑えられているのが原因だ。「いやいや、日本は無駄な残業とか多いぜ」と言う人もいるだろうが、賃金が低いからこそ残業をして残業代を稼ごうとしているのだ。賃金が低ければ消費に回せるお金も減り、消費者がお金を使ってくれないから商品やサービスの価格は低く抑えられ、それが小売業やサービス業で働く人達の賃金上昇を阻む圧力になる。

 最近は派遣などの非正規従業員を増やすことで、人件費を抑制する企業も多い。人件費を抑制して最終的な製品やサービスの単価を引き下げ、価格競争力を生み出そうとしているのだ。

 街に出て働いている人達の様子を見て見ればいい。コンビニやディスカウントストアなどの小売業、ファストフードやファミレスなどの飲食店、映画館や遊園地などの娯楽施設、流通の末端を担う宅配便など、すべて働いているのはアルバイトだ。彼等の給与は、その地域の最低賃金プラスアルファ程度でしかない。東京なら時給1,000円程度、地方なら800円ぐらいだろうか。

 NHKニュースも『労働生産性が高ければ賃金の上昇にもつながる』と思考停止した解説をしているのだが、それは違うと思う。現在は作業を効率化して生産性を上昇させても、それが最終的な製品価格の引き下げ、つまり付加価値の削減に向かうために日本の労働生産性がいつまでたっても低いままなのだ。

 例えば20年前に比べて、コンビニの店員はものすごくたくさんの仕事をしている。牛丼チェーン店のメニューはものすごく増えて、それだけオペレーションも複雑になっている。なのになぜ、それがそこで働く人達の賃金は最適賃金に毛が生えたようなレベルでしかないんだろうか?

 日本の労働生産性を引き上げるのに必要なのは、賃金の引き上げだ。賃金を引き上げて、それを製品価格に適正に転嫁できるようになればインフレが起き、労働生産性向上への好循環が生まれるだろう。

 労働生産性が低いことを、まるで労働者が怠けているかのように語る風潮は間違いだ。(もちろん怠けている人もいるだろうが、そんな人ばかりの会社は早々に潰れて市場から撤退するに違いない。)賃金を引き上げれば労働生産性は上がる。現在の日本が労働生産性を上げる道は、もうそれしか残っていないのだ。

 ……などと書きながら、僕自身は日本で賃金が適正に引き上げられて労働生産性が上がるとはまったく思っていないのだ。日本はこのままデフレ指向から抜け出せないまま、ゆるやかに沈没していくだろう。まあ高齢化社会で年金生活者が多いと、インフレよりもデフレの方がありがたいと思う人も多いでしょうしね。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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