平日昼間の映画館は老人だらけ

古都

 名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマで『古都』を観てきた。名古屋での上映は3日にはじまり16日までだというから、ちょっと焦ったよ。

 Yuki Saito監督は以前務めていた映画専門学校の同僚で、1979年生まれだから今年37歳。今回の映画が長編監督デビュー作というわけではないようだけど(2010年に『Re: Play-Girls』を撮っている)、ある程度の公開規模になるメジャー感のある映画は今回が初めてだ。所属しているSDPの紹介には、これが『商業長編デビュー作』だと書かれている。このあたりは、なんだかヨクワカランね。

 映画の感想は映画瓦版に書いてしまったので繰り返さないけれど、驚いたのは、観客席がほとんど高齢者で占められていることだった。たぶん50歳の僕が最年少で、他の客はすべてシルバー料金で観ているであろう高齢者ばかりだった。ひとりで来ている客もいれば、夫婦らしきカップルも、友達同士らしき女性グループもいたが、どれもこれももれなく高齢者だ。

 平日昼間という時間帯もあるにせよ、映画館のロビーには若い客も大勢いたのだ。でもそういう人達は、少なくとも『古都』という映画を観ない。足を運ばない。見向きもしない。ひょっとしたら、この映画の存在を知ることすらないのかもしれない。まあこの映画字体が、過去に何度か映画化された「古都」のその後の物語という設定だから、川端康成の小説なり、過去の映画版なり、あるいはテレビドラマ版なりを知っている人にしかアピールしないのかもしれないけれど……。

 しかしこういう場面に出くわして感じるのは、「映画館で映画を観るのは高齢者の趣味になりつつあるのだなぁ」ということ。今回の『古都』は極端にせよ、その直後に別の劇場で観た『ブルゴーニュで会いましょう』だって観客は中年以上しかいなかった。日本社会全体の高齢化に合わせて、映画の観客も明らかに高齢化しているのではないだろうか。

 僕自身が50歳で「間もなく高齢者」だから感じるのかもしれないが、おそらく僕の世代ぐらいまでが、映画が娯楽の中で特権的な地位を占めていたことを知る最後の世代なのだ。映画はかつて娯楽の王様だった。映画に行くと言えば、子供は今の子供がディズニーランドに行くのと同じぐらい大喜びした。でも今どき、子供は映画じゃそれほど喜ばない。その子供が高校生や大学生になっても、当然映画を喜ぶようにはならない。

 僕が子供の頃は、映画のテレビ放送がそれだけで大きな話題になった。テレビ局にとって映画は目玉商品だった。『2001年宇宙の旅』や『七人の侍』『スター・ウォーズ』などがノーカットでテレビ初放送されたとき、テレビ局はものすごく力を入れて映画の宣伝をしていた。それだけ映画が世間的な注目を集めていたのだ。

 でも今は地上波での映画放送はどんどん減っている。映画の放送はBSやCS、CATVなどの有料放送でも、観客にアピールする材料にはならない。映画に「特別な何か」を感じるのは、映画が娯楽の王様だった時代を知っている高齢者だけだ。

 娯楽の王様は、いつの間にか王様の地位を追われた。どこかで革命が起きたのだ。でも現在、映画に変わって王位に就いているのは何者だろうか? それがテレビだとも思えず、インターネットだとも思えない。どちらも王様と呼ぶにはあまりにも小粒だ。

 王位を失った映画も、どうしたって小粒なものになる。「古都」の映画化だって、最初は松竹で岩下志麻主演、次は東宝で山口百恵と三浦友和主演の文芸大作だった。今回の映画の松雪泰子が悪いわけではないけれど、昔の映画には比べるべくもないわなぁ……。これが時代というものだ。しかたない。それでも今回の『古都』には、往年の文芸大作の残り香みたいなものは感じられたと思うけどね。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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