グーグルのマインドフルネス革命

グーグルのマインドフルネス革命

 先にチャディー・メン・タンの「サーチ・インサイド・ユアセルフ」を読んでいたのだが、アメリカのマインドフルネス事情を紹介する本として、こちらを先に読んでおけばよかったかもしれない。

 内容はグーグルの人材開発部でマインドフルネスの導入や指導に従事しているビル・ドウェイン氏のインタビューを軸に、そこにサンガ編集部の解説を加えたものだ。インタビュー部分はゴシック体で、解説部分は明朝体で印刷してある。

 全体は大まかに二部構成。第一部では、ストレスの多い最先端企業の中でマインドフルネスが生み出す効果、導入事例の紹介、仏教とマインドフルネスの関わりなどの紹介。第二部はより具体的に、マインドフルネスの実践法を紹介したパートになっている。この第二部は付属のCDと連動していて、読者も実際に本書の中で紹介されているマインドフルネス瞑想を体験できる仕組みだ。

 第二部では瞑想用のアプリ「ヘッドスペース」が紹介されているが、このアプリはガイドの音声がすべて英語。本書を読むと、日本語版の登場が待ち遠しくなるに違いない。

 マインドフルネスについてはさまざまな解説本が出されているのだが、本書はテーラワーダ仏教系のサンガという出版社と編集部が関わっていることもあって、他のマインドフルネス本が遠慮がちに書いている仏教の関わりについてもずかずかと踏み込んでいるのが痛快だ。

 例えばマインドフルネスの定義だが(p.32-33)、本書は『瞬間瞬間の体験に対して、今の瞬間に、判断をしないで、意図的に注意を払うことによって実現される気づき』というジョン・カバッジジン博士の定義を紹介しつつ、その直後に『マインドフルネスは、仏教瞑想をルーツとして一種の瞑想法で、心のトレーニング方法です。漢字で書くと「念」となり、日本語では「気づきの瞑想法」と訳されることもあります』と定義する。前者と後者のどちらがわかりやすいかといえば、少なくとも僕には後者の定義の方がずっとわかりやすかった。

 マインドフルネスは、仏教の瞑想法から宗教色を抜き取ったものなのだ。「これは仏教の瞑想法です」と言ったのでは、キリスト教社会のアメリカでは最初から受け入れられない。だから「これはマインドフルネスという心のトレーニングです。ストレスが軽減し、集中力も増し、対人コミュニケーションも改善して、仕事がとてもはかどるようになりますよ」という紹介の仕方がされている。

 しかしアメリカでマインドフルネスの導入や指導をしている人達の多くは、テーラワーダや禅の修行をした人たちであり、マインドフルネスの背後にはやはり仏教が存在することは間違いない。現在は持てはやされているマインドフルネスが、一過性のブームに終わってしまうのか、それともアメリカ社会の中で一定の定着を見せるのか、その時、マインドフルネスの背後にある仏教はどのようにアメリカ社会の中に受容されるのかなど、いろいろなことを考えさせられる本だった。

 日本でマインドフルネスが話題になったのは、ほんのここ1〜2年のことだと思う。アメリカでのブームが日本に輸入される形で、やはり非宗教的な瞑想法として受容されているように思う。しかし日本にはもともとの仏教的な土壌があるため、アメリカとは違った形でマインドフルネスが受け入れられ定着していく可能性もあるだろう。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 読書

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