日本はもう豊かになれないだろう

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 日本型の教育は、言われたことを黙々とこなす労働者を大量生産するのに向いているらしい。だがこれは教育のせいばかりではなく、日本人の身体に刻み込まれた民族性に起因するものだと思う。

 もともと農耕民族である日本人は、突出した個人の行動よりも、統制の取れた集団行動で物事を成し遂げることに秀でているようだ。独創性はいらない。個人の創意工夫もあまり求められない。言われたことを真面目にこつこつとこなし、周囲の足を引っ張らないようにすれば生きていける。いや、そうしなければ生きていけなかったのだ。

 これが日本の近代化を支える優秀な労働者を生み出した。戦後の復興と高度経済成長を成し遂げたのも、こうした労働者たちの存在によるところが大きかっただろう。だが大量生産・大量消費の時代が終わり、製品やサービスに個性が求められるようになると、こうした日本人の民族性が成長にブレーキをかけるようになる。

 僕が考える「理想的な社会」は、さして才能のない人間であっても、真面目にコツコツと仕事をしていればきちんと暮らしていける世の中だ。日本の高度経済成長時代というのは、かなりそれに近いものだったように思う。会社勤めのサラリーマンが自分の給料だけで家族を養い、子供を大学に進学させ、郊外に庭付きの家を購入することができた。

 こうした家族モデルは高度経済終了後も日本社会に規範となり、1990年代まで日本はこれがスタンダードだった。例えば「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」に登場する家族がそうだ。しかし現在こうした家族モデルは崩壊している。才能のない人間がまじめにコツコツ働くだけでは、家族を養えなくなった。

 これはある程度仕方がないことだ。経済成長がない社会では、同じ仕事を同じ量こなすだけでは収入が増えない。製品やサービスの単価が上がらないのだから、一通りの仕事を憶えてしまった時点で収入は固定化されてしまうのだ。年功序列型の賃金体系を維持するのは難しい。

 こういう話になると、「稼ぎたければ仕事に付加価値を付けろ」みたいなことを言う人が必ず現れる。でも自分の仕事に付加価値を付けられるような才覚は、普通の人間にはないのだ。世の中の人間のほとんどは、言われたことを言われた通りに、黙々とコツコツと、真面目に地道にこなす人々だ。こうしたタイプが世の中の7〜8割で、2割は言われたこともできない人たち、1割は言われたこと以上にできてしまう人たちだろう。7〜8割の人間の全員が、優秀な1割になることはできない。

 現在の日本社会は、仕事に付加価値を付けられる優秀な人間だけが豊かになり、残りの人間は貧困に落ちていくような社会に向かって動いているように思う。その上で、優秀な人間の割合を1割から2〜3割に増やせれば御の字だと思っているのではないだろうか。今後はこの2〜3割の優秀な人たちは極端に豊かになり、残り7割は今以上に貧しくなるだろう。

 真面目にコツコツしか能が無い普通の人たちは、何年仕事をしても給料はずっと頭打ちになるだろう。多くの人が派遣やパートなどの非正規労働になるだろうが、派遣労働の平均賃金はせいぜい時給1,500円程度。これを引き上げるにはそれこそ「仕事に付加価値を付ける」必要があるわけだが、そうできない普通の人たちは、週40時間フルに働いても月収20数万円を稼ぐのが精一杯。年収なら300万円に届くか届かないかのレベル。しかも昇給することはなく、この給与が一生涯続くのだ。

 高度経済成長時代に成立した家族モデルは、もはや存在しない。しかし日本人の多くは、いまだその家族モデルに合わせて自分の人生設計を考えている。20代の頃より、30代の方が収入は増えると思っている。30代よりも、40代の方が収入は大幅に増えるだろうと思っている。でもそんな時代はもう終わっているのだ。そうした人生設計が描けるのは、仕事に付加価値が付けられる一握りの人たちだけなのだ。

 これからの日本人は、自分の給料が一生変わらないという前提で人生設計を考えなければならないと思う。若い人たちには酷な世界だけど、その現実を受け入れた先に、新しい展望も開けてくるのではないだろうか。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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