ゼロからわかるキリスト教

ゼロからわかるキリスト教

 作家の佐藤優による新潮講座「一からわかる宗教・第一期」(2015年1月〜3月)を単行本化したもの。1844年に発表されたカール・マルクスの論文「ヘーゲル法哲学批判序説」を読みながら、伝統的なキリスト教神学と、現代のプロテスタント神学、そして現代社会の関係性を論じるというユニークな企画だ。

 著者によれば、プロテスタントの神学は18世紀末に大きな転換を迎えたのだと言います。それは神の居場所を「天」から「人間の心の中」だとしたこと。しかし20世紀になると神は再び人間の外側にある存在と考えられるようになり、人間にとっての「外部性」を意味するようになったらしい。

 表紙帯には「世界宗教の超入門書にして白眉!」などと書かれているのだが、これはキリスト教を体系的に論じたものではないし、現代のキリスト教神学について整理しながら論じているわけではない。そうした事柄については、著者の「神学の思考」など他書を読んでくれということなのかもしれない。

 この本の特徴はマルクスの論文をガイド線にしながら、縦横無尽に著者の考えるキリスト教や現代社会の実相を語っていくことだ。それはほとんど雑談に近いが、きわめて知的な雑談だ。この雑談を楽しめるだけの予備知識が、読者には求められている。

 キリスト教徒ではない一般受講者向けの講義だが、著者の立場はひとりのキリスト教徒としてのもので、その立ち位置は決してぶれることがない。しかしここで論じられていることはキリスト教の説教ではないし、キリスト教の擁護論でもない。著者はキリスト教徒の立場から真剣に、信者ではない一般読者に対して呼びかけている。これは説教をしているわけではないが、日本人には縁遠いキリスト教と日本人の間に、ひとつの橋を架けようとしている。

 ただそれが成功しているかどうかはわからない。この本を読んでもキリスト教がわかるとは思えないし、キリスト教に対する理解者が増えるとも思えない。もちろん頭のいい著者は、そんなことは百も承知の上でこれをやっているのだろうけれど……。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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