悟らなくたって、いいじゃないか

悟らなくたっていいじゃないか

 副題は「普通の人のための仏教・瞑想入門」になっているが、これは「普通の人」にとってはかなりハードな内容だと思う。

 とりあえず仏教や瞑想について何らかの初歩的な知識がないと、著者たちがここで何を論じているのかすらわからないのではないだろうか。おそらくここで「普通の人」と言われているのは、積極的に仏教徒になるつもりはなく、ハードな瞑想体験もしたことがないという人のことなのかもしれない。知識だけはあっても実践の伴わない「仏教オタク」や「瞑想オタク」を含めて、「普通の人」と言っているのではないだろうか。(ま、そういう意味では僕などは「普通の人」未満なんですけどね……。)

 マインドフルネス瞑想の流行もあり、ここ数年で日本では大きな瞑想ブームがやって来ているようだ。本書はそうしたことも含めて、さまざまな瞑想とその役割について広く紹介しているのが特徴。瞑想を深めても人格の向上はないとか、ある種の瞑想が心に悩みを抱えている人をかえって苦しめるとか、瞑想を深めたために実生活の質が落ちてしまうなど、瞑想のネガティブな側面も書かれている。マインドフルネスの紹介ではしばしば瞑想のメリットばかりが過剰に喧伝されるのだが、どうも瞑想とはそういうものでもないらしい。

 なおこの本の終盤近くでは、巷のマインドフルネス・ブームに対する批判を行っている部分もある。仏教僧侶や仏教研究者の目から見ると、仏教信仰や仏教の修行体系から切り離されたマインドフルネスには、何かと問題があるように見えるらしい。これはこれで、ひとつの貴重な意見だと思う。

 瞑想のハウツー本ではないので、「これを読んで瞑想をはじめましょう」というものではない。しかし瞑想に興味を持った人が、その効果だけでなく、副作用について知ることができるという意味では、他に類書がないと思う。医者の見立てや治療についても、効果だけでなく副作用について説明されるのが最近の常識だ。ならば心の修養としての瞑想についても、効果だけでなく副作用について説明されるのが当然かもしれない。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 読書

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