最も危険なアメリカ映画

最も危険なアメリカ映画

 映画評論家・町山智浩の最新刊。D・W・グリフィスのサイレント映画『國民の創生』(1915)から21世紀の映画まで多くの映画を取り上げながら、映画とそれを生み出したアメリカ社会の関係をあぶり出していく。映画のタイトルをあげるだけでなく、その内容や見どころも紹介しているため、映画ガイドブックとしても使える内容になっている。

 映画の内容やテーマと映画が作られた時代背景をぶつけ合わせ、そこから映画の背後にある作り手の思惑やアメリカ社会のありようを浮かび上がらせていく手並みは相変わらず見事。映画評論としても社会批評としても、快刀乱麻を断つがごとき爽快感がある。

 だがこれだけの仕事をこなしながら、文章から「僕って頭がいいでしょ」「いろいろ知ってて偉いでしょ」という上から目線が感じられないのが、この著者のいいところだと思う。著者の文章の根底には、著者の映画やアメリカという国に対する人並み外れた愛着が感じられるのだ。映画にしろアメリカにしろ、著者は「他人ごと」として冷たく突き放すことはしない。著者はこれらを、半ば当事者として論じている。アメリカ社会やアメリカ映画を細かく腑分けし、その腐った部分や見下げ果てた部分を暴きながらも、根底の部分ではアメリカという国やアメリカ映画が好きで好きでたまらないのだ。

 取り上げられている映画とテーマはさまざまだが、全体を貫くテーマがいくつかある。その筆頭は『國民の創生』からはじまる黒人差別や人種差別の問題で、次いで宗教(キリスト教原理主義)、ポピュリズム(大衆主義や反知性主義)、戦争などだ。本書はこうした大きなテーマを縦軸に置き、各映画に固有の問題を横軸にして全体が構成されている。この大テーマは、アメリカ在住の著者が常に取り組んでいるテーマでもあるのだろう。

 著者にはコラムニストとしての仕事も多いのだが、本書では映画評論とコラムが見事に融合している。他の追随を許さない、まさに町山節とでも言うべき世界だ。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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