第29回 東京国際映画祭(前編)

第29回 東京国際映画祭

 土日を使って東京国際映画祭に参加することにした。といっても、プレスの資格で映画を何本か観るだけだ。昨年までは東京ぐらしだったので、会期が始まる前にプレス向けの試写を観ることもできたのだが、今回はそういうわけにも行かない。

 7時台の新幹線で名古屋から東京へ移動。そのまま六本木まで出てプレスセンターでIDパスを受け取る。事前に観るべき映画はすべてネットで予約しているので、パスさえ受け取ってしまえばあとは楽ちんだ。今回は「とにかく本数を稼ぐ」ことを目標にして、出品部門などは問わず、スケジュール的に一番たくさん見られることを優先した。そのため映画祭でなければならない映画に限らず、間もなく劇場公開される映画も何本か混じっている。

 最初に観た『イタズラなKiss THE MOVIE 〜ハイスクール編〜』、2本目の『14の夜』、3本目の『いきなり先生になったボクが彼女に恋をした』は、すべてそうした「間もなく公開」の映画だ。

 『イタズラなKiss』は国内外で何度もドラマやアニメになっているので今さらの感が強いのだが、今回は長年『イタキス』に関わってきたプロデューサーの初監督作品というのが売りなのかも。キャラクターや演出がいかにもマンガチックなのだが、映画作品として稚拙だと思う。

 『14の夜』はちょっと面白かったし、劇場内でもしばしば爆笑が起きていた。物語の舞台になっているのは1987年夏で、映画の主人公達は14歳の中学3年生だが、同じ頃僕は21歳になっていて、東京のデザイン会社でグラフィックデザイナーの修行中だった。当時はバブル経済まっただ中だったはずだが、この映画に登場する田舎町にはそんなものは微塵も感じられない。でもこれが「バブル景気」と言われるものの実態だったのではないだろうか。

 『いきなり先生になったボクが彼女に恋をした』はいろいろな点で残念な作品。せっかく沖縄が舞台になっているのに、物語は沖縄である必然性がほとんどまったく感じられない。出演者にも沖縄ローカル色が感じられない。沖縄に中国や韓国からの観光客が多いのは事実だが、そうした事実もあまり物語の中には生かされていないように思った。ラブストーリーとしても、もう一歩押しが弱い。煮え切らない、中途半端な映画なのだ。ドラマが沸点に達する前に火を落としてしまったような作品だと思う。せめて一煮立ちさせてほしかった。

 4本目はアメリカの不法移民問題を高校生と教師の立場から描いた『フロム・ノーウェア』。これは見応えのある素晴らしい作品だった。映画祭はこういう映画と出し抜けに、一切の予備知識なしに出会えるのが面白い。間もなく卒業を迎える高校生のクラスに、身分が不安定な不法移民の生徒が3人。担任教師は彼らが正式な移民(あるいは難民)として認められるように、専門の弁護士と面接するようにすすめる。物語は生徒3人が抱え込んでいるそれぞれの境遇と、彼らの学園生活を同時進行で描いていく。

 5本目の『フロッキング』はスウェーデン映画。主人公は高校生なので青春映画風のエピソードも多いのだが、この映画で主役になっているのは主人公たちを含めた「地域共同体」のありようだ。全員が顔見知りのような小さな村で、女子高生が同級生からのレイプを告発する。だが被害を訴えた少女は地域全体から「嘘つき」呼ばわりされ、加害者だとされた少年と家族は逆に「虚偽の告発によって傷つけられた人たち」として地域の同情を集めていく。

 直前に観た『フロム・ノーウェア』もすごいと思ったが、『フロッキング』はそれ以上だった。たぶん『フロム・ノーウェア』が移民国家であるアメリカに固有の問題を描いているのに対し、『フロッキング』はより普遍的な問題を描いているからだろうい。共同体内部で起きる暴力と、それを告発することで生まれる亀裂。その亀裂を修復するために、暴力を告発した者がひどいバッシングを受けて排除されることになる。これはスウェーデンの田舎町で起きた事件ではない。現在の日本でも起きている。例えば沖縄の基地問題などがまさにそうだ。

 映画の後は築地のカプセルホテルで一泊。日曜日は映画を4本観る予定になっている。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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