お経の話

お経の話

 漢訳経典を中心にしたお経についての概説書。出版は1967年なので、かれこれ半世紀前だ。細かな部分についてはその後の学問的な成果や発見によって改められる部分もあるのだろうが、概説としては良くまとまっている良書だと思う。

 仏教についてはまるで素人なので、この本を読むことで「なるほど、そうだったのか!」と目から鱗が落ちるような経験をした部分も多い。

 例えば小乗経典が先に成立して、その後に大乗経典が作られたということではなく、双方共に成立時期はほぼ同じだということ。南伝の小乗仏教(テーラワーダ仏教)も数多くあった部派仏教の一派であり、仏陀の直説をそのまま伝えているとは言いがたいこと。大乗経典は中国で作られた偽典ではなく、原典はインドの仏教僧団の中で成立したものだということ。小乗経典が瞑想のノウハウを伝えているのに対して、大乗経典は瞑想で得られたイメージを伝えようとしていること。インドで仏教が滅んだことから、サンスクリット語の原典が失われた経典も多いこと。インドから中国にもたらされた経典は膨大だったが、その多くが翻訳されずに散逸し、歴史の中から永久に消滅してしまったこと。

 書店には「◯◯教入門」のような経典ごとの解説書が売られているが、この本では仏教史とすり合わせながら、各経典の成立や内容、多国語訳との関わりなどを大きく俯瞰しているのが特徴だ。これは「お経入門」ではない。「お経」という視点から見た「仏教入門」なのだ。著者は同じ岩波新書から「仏教 第二版」という本も出しているが、それと併せて読むべき本かもしれない。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 読書

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