タワーマンションは現代のバベルの塔

中銀カプセルタワービル

 黒川紀章(1934〜2007)が設計した中銀カプセルタワービルを建て替えるか保存するかで、住民や所有者の意見がまとまらないらしい。これは1972年(昭和47年)竣工だから、今年で築44年になる「歴史的建造物」だ。昔はデザインの教科書などに必ず掲載されていた昭和版のデザイナーズマンションで、当初の計画では25年ごとにモジュールを交換し、常に新築同然のマンションへと新陳代謝していく計画だったらしい。

 だがこれは計画倒れに終わり、個々のモジュールは古くなるばかり。共有部分もガタが来ているらしい。最近は雨漏りなどがひどくなって、総戸数142戸のうち半分ほどは使用できない状態になっているという。もういい加減に駄目だと言うことで建て替えも検討されているようなのだが、その意見がまとまらないから話が先に進まない。

 たった百数十戸のマンションですらこれなのに、1990年代以降に建てられた大規模なタワーマンションなどは将来建て替えが可能なのだろうか? 僕は以前、東京都の中央区佃というところに住んでいた。(このブログのタイトルはそれにちなんでいる。)すぐ近くにはかつての石川島播磨重工業東京工場の跡地再開発した「大川端リバーシティ」と呼ばれるタワーマンション群があって、数棟のタワーマンションが建っていた。

 その中でも大きな建物である54階建の超高層タワーマンション(センチュリーパークタワー)は、総戸数が756戸もある。こんなもの、将来建て替えようとしても所有者同士の話は絶対にまとまらないだろうな……。他のマンションも200戸、300戸、500戸という規模。まるでお話にならない。

 「タワーマンション 建て替え」でGoogleを検索すると、必ず「建て替えは不可能」という話が出てくる。技術的に不可能なわけではない。商用ビルやホテルの建て替えはいくつも行われている。でも商用ビルは持ち主や管理者がはっきりしているから、オーナーが「建て替える」とか「取り壊す」と決めればそれで話が進むのだ。しかしタワーマンションは区分所有者たちの大半が「こうする!」と意見をまとめない限り、どうすることもできない。

 大川端リバーシティはまだいいのだ。東京都中央区で、銀座や東京駅まで歩いて行けるという立地の良さもある。建て替えてもその後の需要はあるかもしれない。でも中途半端な地方都市に、中途半端な規模で作ってしまったタワーマンションなど、未来永劫再開発のしようがないはずだ。いずれは越後湯沢の温泉付きリゾートマンションのように、無人の廃墟になってしまうに違いない。

バベルの塔

 タワーマンションは現代版のバベルの塔になるかもしれない。

 聖書に登場するバベルの塔は、建設中に神が人々の言葉を乱したことで作業が放棄され、廃墟になって朽ち果てたという。現代のバベルの塔は、建設が終わって数十年後に言葉が乱される事態が起きるだろう。

 建物が老朽化したとき、ある者は修繕して住み続けることを主張し、ある者は取り壊して立て直すことを主張し、別のある者はあらゆる責任を放棄して建物が朽ち果てるに任せる。そこでは相互に話がまったく通じない状態が生じる。数百件の部屋をバラバラに所有する住民やオーナーたちが、互いのエゴをぶつけて話に収拾がつかなくなる。

 そして結局何もできないままに建物の老朽化が進行するようになる。居住環境が悪化し、それに耐えられなくなった住民は出ていき、管理が滞るようになり、さらに居住環境が悪化し、住民が退去し、治安が悪化する。数十年たてば、全国あちこちで高層スラムと化したタワーマンションが見られるようになるだろう。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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