仏教入門

仏教入門

 松尾剛次の「仏教入門」(岩波ジュニア新書)を再読した。2008年頃に一度購入して読んでいるのだが、先日外出時に立ち寄ったブックオフの100円棚でまた買ってしまったのだ。今回はシャーペンや鉛筆で傍線を引きながら読んでいたが、これはとても良い本だと思う。

 全体の構成としては「仏教思想の紹介」ではなく、「仏教通史」の形を取っている。第一章で仏教思想のごく簡単な紹介を紹介をしているが(縁起説、輪廻説、四法印、四諦と八正道、戒律など)、第二章以降は釈迦の生涯から大乗仏教の設立までの紹介。第三章で中国と朝鮮の仏教について解説し、第四章からは第六章までは日本仏教史だ。

 著者は日本中世史が専門だが、日本仏教史としては以下のような大きな流れが主張されている。

  1. 奈良時代の仏教: 国家仏教の時代であり、国家護持のための仏教。国家公務員としての官僧たちによる仏教。仏教は中国から輸入された外来宗教で、本場の中国に追いつくことが求められた。

  2. 平安時代の仏教: 最澄(天台宗)と空海(真言宗)による官僧仏教の刷新。日本に密教の思想が輸入される。このうち比叡山延暦寺の天台宗は、鎌倉新仏教への導火線になる。

  3. 鎌倉時代の仏教: 新仏教の登場。官僧身分を離れた遁世僧たちによる、新しい仏教運動。在家信者を含めた教団が誕生し、禅宗などは支配層となった武家社会の中にも急速に浸透していく。

  4. 室町時代から安土桃山時代の仏教: 日蓮系や親鸞系の仏教が大きく勢力を伸ばすし、仏教勢力が各地で自治を獲得するまでになるが、やがて信長や秀吉に屈服していく。

  5. 江戸時代の仏教: 鎌倉仏教の全国への浸透と、幕府行政の末端を担う新たな官僧化。仏教は庶民の中にも道徳や倫理として浸透。しかし儒家や国学者からは、仏教に対する批判が出されるようになる。

  6. 明治期以降の仏教: 国家の手を離れる仏教。神仏分離と廃仏毀釈で仏教は大打撃を受ける。日本仏教の変質。宮沢賢治作品の中の日蓮主義。仏教系新宗教の登場。

p.123

 日本の仏教が「国家統一のための宗教」として導入され、硬直した官僚化に陥るたびに、そこから何度も脱皮を何度も繰り返しながら大きく成長して行く様子がダイナミックに描かれている。

 「官僧」と「遁世僧」というのが著者の仏教史のキーワードのようだ。官僧仏教が停滞してくると、それと距離を置く遁世僧たちの運動が燎原の火のように広まっていく。そしてそれがまた権力者に取り込まれた官僧化すると、その中からまた新たな運動が立ち上がる。

 ただし明治以降に仏教が国家権力の庇護を離れると、権力に接近する「官僧化」という求心力と、そこから外部に離脱しようとする「遁世僧」の遠心力のダイナミズムが仏教から失われてしまったように見える。

 中世の都市化は鎌倉新仏教を生み出し、近代日本の都市化は仏教系の新宗教を多数生み出した。しかし今はどうだろう。マスメディアやネットを使ってゆるやかにつながりあう都市住民たちは、仏教に何を求めているのだろうか。ストレスの多い社会の中で、「心を整える技術」として仏教が果たす役割りは大きいかもしれない。

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