バス事故は規制緩和のせいなのか?

写真:TBS News i

写真:TBS News i

 軽井沢で起きたバス事故については、小泉首相時代の規制緩和に原因の一端があるとコメントされることが多い。しかし現代ビジネスの記事『高橋洋一「ニュースの深層」スキーバス転落事故はどうすれば防げたのか?~「小泉時代の規制緩和が原因」説を検証する』によれば、規制緩和する前も後も事故率にはさして大きな差がないのだという。

 ただしバスの台数は増えているのだから、事故率が同じでも事故数は増えるのだろう。また最近は昔に比べて、大規模な交通事故が少なくなり(交通事故死傷者数はどんどん減っている)、その中で起きる大型バスの事故が突出して目立ってしまうこともあるのかもしれない。

 社会実状データ図録のグラフを見ると、日本国内を走る車の数はずっと右肩上がりに増えて来たが、ここ10年ほどはそれが横ばいになっている。事故発生件数、負傷者数、死者数などは、どんどん減る傾向がある。車の数全体が右肩上がりから横ばいで、事故数はどんどん減っているのだから、日本では自動車事故の発生率がどんどん下がっているわけだ。しかしバスの事故率に大きな変化がないのだとしたら、これはこれで問題があるような気もする。

 今回の事故に関しては、バス運行会社の杜撰な管理体制が問題になっているし、運賃が法定基準を大きく下回っていたことも問題視されている。今回事故を起こしたバスの場合、27万円が法定基準の下限のはずが19万円で契約されていたという(参照)。おおよそ3割引だ。これほどのディスカウントがまかり通るなら、法定基準の1割引や2割引はバス業界の中で常態化していると考えた方がいい。

 この法定基準はバス会社の利権を守るために存在するのではなく、バス運行の安全を守るために作られたものだ。安全確保は「見えないコスト」だから、バス会社はコスト削減のためにまずこれをカットする。バスのリース代や燃料代などの「見えるコスト」を削ればバスは動かないが、安全のためのコストや従業員教育は削ってしまってもとりあえずバスが動く。ほとんどの場合事故は起きないし、従業員の態度が悪くて乗客に不快感を与えたとしても、どうせツアー客は一度きりの客だ。

 だからバス会社は、コストカットのために安全を犠牲にする。日本中で膨大な数のツアーバスが走っているし、「格安ツアー」を売りにしている旅行会社も多い。大きな事故を起こすのは、その中のごくごくわずかな例に過ぎない。事故は滅多に起きないのだから、やはり「見えないコスト」を犠牲にして「格安」を売りにした方が客は喜ぶ。

 しかしこれはやはり、もうやめにした方がいいんじゃないだろうか……。

 規制緩和でバス運行会社の数が増え、会社の間で過当競争が起きているのだという。運転手も人手不足になっているが、そのわりに運転手の待遇がよくならないのは法定基準が守られていないからだろう。

 規制を再び強化して、新規業者参入のハードルを上げれば問題は解決するだろうか? それよりむしろ、ツアー会社や乗客に適正なサービスを提供できず、「格安」だけを売りにして安全を疎かにしている業者に市場から退場してもらった方がいい。まずは運賃の法定基準を厳格化して、これに満たない価格で営業している業者にはお引き取り願おうじゃないか。

 それによって、バスツアーの料金は上がるかもしれない。しかしバス会社が「格安料金」で旅行会社にアピールできなくなれば、安全性や設備の良さなど、別のところで旅行会社へのアピールがはじまるはずだ。それはツアーを利用する乗客のためにもなるんじゃないだろうか。ダメな会社は潰れて結構。それがむしろ、世のため人のためなになるのだ。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中