未練がましいジョージ・ルーカス

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 ジョージ・ルーカスが自分の手を離れて製作された新作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を批判して、一連の権利売却を「奴隷商人に売ってしまった」と表現したことが話題になっている。

 このニュースを見て『フォースの覚醒』に批判的な人たちは「やはりルーカスも新作に不満なのだ!」と溜飲を下げているようだが、僕はこの一件をかなり冷ややかな目でながめている。これはルーカスの未練だろう。彼はどんな映画が作られたところで、自分以外の人が『スター・ウォーズ』を作れば文句を言ったと思う。

 ルーカスは大手映画会社に作品をいじられることに、昔から不満を持っていた。『アメリカン・グラフティー』(1973)が映画会社に数分カットされたことについて、「愛する子供の指が切り取られてしまった!」と騒いだこともある。(このカットは後にディレクターズカットで復活。)

 彼はこのことで大手の映画会社に不信感を持ち、自分自身の企画で映画を100%完成できるルーカスフィルムを作ったのだ。映画会社が製作に金を出すと、彼らは口を出し、手も出してくる。だから映画会社には金を出させない。自分で映画を作る。映画会社はそれを配給し、ビデオ発売するだけだ。『スター・ウォーズ』の1作目(エピソード4)は今でも20世紀フォックスが一部の権利を持っているようだが(金出したからね)、それ以降の作品はルーカス自身の100%コントロール下にある。

 ルーカスは『スター・ウォーズ』新三部作を作って20世紀フォックスで配給しつつ、スピンオフアニメ「クローン大戦」(2003ー2005)をワーナー系のカートゥーン・ネットワークと共同製作し、長編アニメ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(2008)はワーナー・ブラザースで配給した。『スター・ウォーズ』に関して言えば、ルーカスは好き放題に何でもできたのだ。

 そのルーカスが映画製作から引退することは発表したのは2012年。製作した映画『レッド・テイルズ』(2012)の公開とほぼ同時だった。この映画は彼が1988年頃から企画していた念願の作品で、ヒットしたら続編も作ってシリーズ化をもくろんでいたらしい。ところがこれがぜんぜんヒットせず、興行的には惨敗状態。ルーカスはこれで、完全にやる気を失ってしまったのだ。

 ルーカスが今後も『スター・ウォーズ』を作りたいなら、自分の思い通りの続編を作ることは十分にできたはずなのだ。そのためのアイデアも、資金も、人材も、設備も、才能も、すべて持っていたのだから。だも彼には「作りたい」という意志がなかった。だから『スター・ウォーズ』の続編製作の権利共々、一切合切をディズニーに売却した。

 今さら「奴隷商人に売ってしまった」などと言ったところで、こうなることは最初からわかっていただろうに。他人に続編やシリーズを作られるのが嫌なら、シリーズの著作権を手もとに置いたままルーカスフィルムだけ売却するという方法だってあった。もちろん値段はずいぶん下がるだろうが、ルーカスは別にお金に困っているわけじゃない。『スター・ウォーズ』の権利さえ持っていれば、その関連商品化権だけで今の生活を維持するだけのお金は手に入ったのだ。

 ルーカスの嘆きは「未練」でしかないと思う。今後ルーカスが自分の企画で本当に面白い新しい映画を作ったなら立派なものだと思うが、たぶんそれはないと思う。ルーカスは映画作りの才能はあっても、天性の映画作家というわけではない。天性の映画作家なら、『スター・ウォーズ』(1977)のあと『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)まで、22年も映画を作らずにいるなんてあり得ないよ。

 この間に、兄貴分のコッポラは、盟友のスピルバーグは、同世代のスコセッシは、何本の映画を撮ってるんだ?

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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