新三本の矢は荒唐無稽なおとぎ話だ

50年後も人口一億人

 昨日に引き続き、安倍内閣の「新三本の矢」についての話だ。

 安倍首相はこの政策について「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も、人口1億人を維持する」と言っている。しかし少子化対策だけで人口1億人なんて話は、あまりにも荒唐無稽な夢物語で現実味がまったくない。これは「絵に描いた餅」ですらないのだ。これは具体的な絵を描いた時点で、その破綻が誰の目にも明らかになってしまう。こんな話が出てきた時点で、政府がこの問題にまるで本気ではないことは明らかだと思う。

 では「50年後に人口1億人」のためには何が必要なのか、荒唐無稽な絵を描いてみよう。これは僕が描くわけではなく、昨年4月の段階で、政府の経済財政諮問会議の下に設置された専門調査会が発表して新聞などでも報じられているものだ。

  • 現在の日本人口は約1億2,700万人。出生率は1.3〜1.4程度。

  • 出生率が現状維持だと、2060年には日本の人口が約8,700万人まで減少する。

  • 50年後の人口1億人を維持するには、2030年までに出生率を2.07まで回復させて安定させる必要がある

 政府は現時点での希望出生率1.8を実現することに力を入れる方針のようだが、日本の出生率は数値は1984年(昭和59年)を最後にこのレベルに達したことが一度もない。ちなみに出生率が2.07を上回っていたのは1973年(昭和48年)が最後だ。(これらの数値の元データは内閣府が発表した「平成25年版 少子化社会対策白書」にあるもの。)

 昨日の記事で僕は、『今1.4程度に落ち込んでいる出生率を、1.8まで回復できる』のがいつなのか、具体的に時間を区切って国民の前に提示すべきだと書いたのだが、じつはこれは既にタイムリミットが決まっているのだ。2030年に出生率を2.07で安定させるのだから、少なくともそれ以前には出生率1.8を通過するはずだ。

 昨年2014年の出生率は1.42だった。2030年までは16年で出生率を2.07まで0.65引き上げるのだから、毎年平均0.04ずつ出生率が上昇すればいい。出生率1.8は10年以内に達成できるだろう。しかし30年も40年もかけて現在のレベルまで落ち込んだ出生率を、あと15年でどうやって引き上げられるのだろうか?

 日本の出生率が過去最低になったのは2005年の1.26だ。日本政府はあれやこれやの少子化対策を行って、2014年に出生率1.42まで回復した。0.16の回復に9年かけたのだ。1年あたり0.018という水準だ。日本がこれまで少子化対策にまったく無策で何も手を打ってこなかったというならまだしも、考えられる手立てを行えるだけ行った上で、なお毎年この程度の水準でしか出生率が回復しないというのが現実なのだ。

 上記で紹介した内閣府の「平成25年版 少子化社会対策白書」では、日本の人口推移について高位・中位・低位3つの出生率でシミュレーションを行っている。中位は現状と同じ出生率1.3〜1.4のレベル。低位は1.1前後。そして高位でも1.6程度の想定だ。政府が今回「新三本の矢」で持ち出した1.8はそれをはるかに上回ったものであり、2.07に至ってはいったいどこの世界の話なのかということになる……。

 そうしたことを考えると、10年以内に出生率1.8、15年後に出生率2.07という目標がいかに荒唐無稽なものかがわかろうというものではないか。これを実現するには、魔法でも使わなければ無理なのだ。

 再度言っておきたい。こんな話が出てきた時点で、政府がこの問題にまるで本気ではないことは明らかだと思う。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

新三本の矢は荒唐無稽なおとぎ話だ」への1件のコメント

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