軽減税還付の財務省案は泥棒と同じだ

伊吹文明

 食料品に対する軽減税率実施のため、一度10%の税を納めさせた後にマイナンバーと紐付けされた買物履歴を使って2%分の税を還付するという財務省案。これに対して伊吹文明元衆院議長(現在は自民党所属の衆議院議員)が、「財務省が考えるにしては非常にみっともない案」「こんなことを財務省が本気になってやっていたら、財務省としての存在価値はない」などとこき下ろしたらしい。

 これは要するに、「あれこれ屁理屈を付けて国民の税金を国がネコババしてるじゃないか!」という批判だと思う。農水省の統計によれば、食料の最終消費量は94兆円。これに消費税を10%かけて2%還付すると、還付される額は本来なら1兆8,800億円になるはずだ。

 ところが財務省案では還付額に上限を付けて、国民ひとりあたり上限4,000円まで還付するのだという。人口が1億3,000万人だとして、最大限に還付しても5,200億円。食料品からあらかじめ余計に徴収している消費税が1兆8,800億円だから、差し引きすれば国には1兆3,600億円の余剰税収が生じるわけだ。

 これってネコババでしょ? うっかりならともかく、計画的にやっているんだから泥棒に等しいよ。

 では実際のところ、食料品の税率は実質何パーセントになっているのだろうか? 食料品の最終消費量が94兆円、消費税10%で9兆4,000億円、そのうち還付される最大額が5,200億円なら、実質的に食料品にかかっている消費税額は8兆8,800億円。これは食料品の消費税率が9.5%になっているのと同じじゃないか……。

 要するに財務省は、食料品に軽減税率を導入する気などさらさらないのだ。連立を組んでいる公明党が軽減税率の導入を公約にしているから、その顔を立てて、食料品については0.5%だけ税率を引き下げたのだ。

 伊吹元議長は事前徴収した消費税がすべて還付されるという前提でこうした計算をするわけだけど、麻生財務大臣が言うように、実際には「カード持ち歩かなければ減税なし」ということになるわけだ。道端の自販機、駄菓子屋、露天商まで、すべてがマイナンバーカードに対応した商売ができるかどうかは疑わしい。国民に還付される消費税は5,200億円に遠く及ばないだろう。食料品の消費税率は限りなく10%に近づいていく。

 これで「食料品に軽減税率を導入し、消費者の負担を軽くしました」なんて言えるのか? 財務省にとっては痛くも痒くもない。むしろ仕組みがヤヤコシくなって、国民負担が増えるばかりだ。

 諸外国で複数税率を導入しているところは、商店で商品を購入する時点で、値札に複数税率が反映されていることがほとんどだ。食料品の税率が低くなった場合も、その分の税金をその場で精算するから、税率が素直にそのまま反映される。

 「それでは小売店の負担が増える」なんて冗談を言いなさるな。マイナンバーと買物を紐付けしようとすれば、スーパーの各レジにすべてマイナンバーのICチップを読み取る装置を付けなければならない。小売側は食品とそうでないものを区分してレジに登録し、食品で生じた還付分のポイントをお客の持ち込んだマイナンバーカードに加算しなければならない。

 「カードリーダーの負担はともかく、あとの仕分け作業は全部コンピュータで自動化されているから」と言うのであれば、商店の棚に消費税8%と10%の商品が並んでいても同じことだろう。商品に値札を付ける段階ですべて内税処理すれば、レジで行うのは単純な足し算だけだ。何も難しいことは生じない。

 与党は財務省案を叩き台にして検討作業に入るとニュースで報じられていたが、こんなものを叩き台にしようという発想がそもそも僕の理解を超えている。財務省は職員の天下り先を新たに作れるこの案を強力にプッシュするかもしれないが、まともな判断力を持つ政治家ならこんなものをまともに取り合ってはいけない。「話にならない」で即時却下すべきだ。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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