徴兵制は本当にあり得ないのか?

陸上自衛隊

 今後安保関連法案が国会を通過してしまうと、「戦争になる!」「徴兵制だ!」と大騒ぎする人が現れると思うのだが、僕自身は戦争はともかく、徴兵制についてはあまり心配していない。

 戦争は自分がやる気がなくても、相手次第でどうにでもなってしまう可能性がある。だから国内の政治体制がどうであれ、戦争が起きるときは起きるし、巻き込まれるときは巻き込まれるのだ。それは北朝鮮や中国に対する防衛行動ということかもしれないし、アメリカの戦争にくっついていくという形かもしれない。

 いずれにせよ、日本が「戦争は嫌だなぁ」と思っていても、戦争になる時はなる。そうならない努力は当然すべきだが、日本さえその努力をしていれば決して戦争に巻き込まれることはないというのは、自分勝手な幻想に過ぎないようにも思うのだ……。

 これに対して徴兵制は、日本が独自に「やる!」と決めなければできないものだ。そしてこれはかなりコストがかかるものなので、「やる!」と決めるためにはそれなりの覚悟が必要だし、国民の理解も必要になる。でもそれが不可能なのかと言えば、必ずしもそうではないだろうなぁ……と思うのだ。

 徴兵制については「現実ではない」というのが僕自身の考えだし、それは今も基本的には変わっていない。この場合の徴兵制というのはスイス、韓国、イスラエルなどで行われている「国民皆兵型」の徴兵制度のことで、一定年齢の達した青年を漏れなく一定の年限で軍隊に入営させるというものだ。

 日本にとって一番新しい徴兵制の記憶は第二次大戦中のそれだったから、この国民皆兵型で誰も彼もが軍隊に入るというのがすぐ頭に思い浮かぶ。「徴兵制度が導入されれば、あなたの子供や孫たちが戦争に行くことになるぞ!」と脅かす人たちがいるのは、この国民皆兵型の徴兵制度を念頭に置いているのだ。

 でも実際の徴兵制度では、国民皆兵型になっている国はさほど多くない。ほとんどの国の軍隊には「定員」というものがあって、その定員に応じて一定数を徴兵によって補充していくのだ。その数は「ごくわずか」とは言いがたいが、「国民皆兵」と呼ぶにはごく少ない人数になるのがほとんどだ。

 じつは日本でも昭和初期の軍縮時代には、同じような形で徴兵制が運用されていた。徴兵検査は行うが、実際に召集されるのはそのうちのごくわずか。徴兵検査で甲乙丙の合格者があれば、上位の甲種から順番に召集して、下位の乙種や丙種の合格者にはお呼びがかからなかった。(戦争末期になるとこうした人たちにもお呼びがかかるようになるのだが……。)

 タイの徴兵検査は毎年世界ニュースで配信されるが、検査後にクジ引きで入営者を選抜するため、この時当たりくじを引いたショックで失神してしまう者が出たりする。

 徴兵制度は「国民を全員軍隊に入れて戦場に連れて行けるようにすること」ではない。徴兵制度の本質は、軍隊が必要とする優秀な人材を、国民の中から自由に選抜できる権利を国が手にすることなのだ。

 「現在の兵器はハイテク装備なので、兵隊の頭数さえ揃えればいいというものではない!」と言う人がいる。なるほど、その通りだろう。ならば最新鋭のハイテク装備を扱える優秀な人材を、国が国民の中から選抜できる仕組みを作ればいいではないか。

 僕が想像する未来の徴兵制とは、例えば次のような制度になる。

 徴兵制の対象になるのは現在の「任期制自衛官」の部分。この大半を徴兵制に切り替えるのだ。18歳人口が毎年100万人だとして、そのうちの1%程度、1万人を徴兵する。条件としては、国公立大学や有名私立大学に入学できる程度の優秀な学力を持ち、なおかつ心身共に健康な者。自衛官任期は3年とし、この間は給与を支給すると共に、任期終了後は希望する大学への進学と、学費の全額支給を補償する。大学卒業後は本人の希望があれば、学校の進路指導とは別に個別の進路指導や就職斡旋に応じる。

 この条件に応じるか否かは、平時においては対象者の自由。大学進学者の半数が何らかの奨学金を支給されているという時代なのだから、任期終了後の進学や学費支給に魅力を感じて応じる人も多いはず。徴兵の声がかかる1万人は国家が認めた「エリート学生」なので、それを名誉に感じて入隊する学生も少なくないだろう。

 こうして集められた優秀な学生たちは、自衛隊でみっちり訓練を受けた後に再び社会に出て行く。彼らの多くは一流企業に就職し、社会の中枢を担っていく人材になるだろう。数十年たてば、日本社会の根幹部分が、多くの「自衛隊出身者」で占められるようになる。日本のあちこちに、自衛隊の実状を肌身で知った自衛隊シンパが増えていく。これは日本の安全保障において、かなり大きな力になると思うのだ。

 間違いなく言えることは、以下のようなことだ。

  • 徴兵制が導入されても、日本が諸外国と全面戦争にでもなっていない限り(第二次大戦中の日本はまさにそういう状態だった)、国民の大半が戦争に駆り出されるようなことはあり得ない。

  • 徴兵制が導入されたとえいても自衛隊(あるいは将来の国防軍)に徴兵されるのは自衛隊が望む条件を満たした「優秀な人材」だけであり、しかもその人数はごく限定されたものになる。

  • 徴兵制が導入されても、ほとんどの国民にとっては無関係なものでしかない。

 徴兵制が導入されても、我々の子供や孫が無理矢理戦争に引っ張って行かれるようなことはまずないだろう。なぜなら徴兵対象になりそうな年齢のほとんどの青年は、自衛隊が無理矢理にでも引っ張っていきたいと思うほど優秀ではないからだ。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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