「自衛隊は違憲だ」と言うエセ保守主義者

陸上自衛隊

画像:ウィキペディア

 安保関連法案が国会で議論され、憲法改正についてもいろいろと議論されているのだが、その中で「そもそも自衛隊は違憲である」と主張する人たちがいることが気になっている。

 「自衛隊は違憲である」というのは、かつては左翼革新勢力の常套句だった。例えば社会党(現在の社民党)は自衛隊を違憲だと主張し、日本は憲法を守って自衛隊を解体し、国際的には東西どちらの陣営にも属さない中立であるべきだと主張していた(非武装中立論)。

 これに対して「外部の武力攻撃から国民の生命と安全を守ることは憲法が定める国家の義務である」「自衛のために必要な必要最小限の武力は保持することが認められる」「自衛隊は違憲ではない」と主張していたのは、自民党を筆頭とする政権与党の方だったはずだ。

 日本国憲法制定時に、日本が一切の戦力を放棄して平和国家を目指そうとしたのは事実だ。1947年に文部省が発行した「あたらしい憲法のはなし」には次のように書いてある。

これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戰力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。(青空文庫「あたらしい憲法のはなし」より

 少なくともこの時点では、日本は一切合切すべての戦力を放棄して丸腰になるつもりでいた。国際社会がそれを望んだということもあるが、日本人自身がそれを歓迎したという面もある。

 何しろ当時の日本は一面の焼け野原で、国民は極貧生活を送っていた。戦力維持に金をかけるより、まず食べることが先決だったし、つまらない戦争はもうこりごりだという気持ちもあった。戦争に負けて主権が奪われたとしても、それが何だと言うのか。連日空襲があり、若い男たちが戦地に駆り出されて死んでしまった戦争中に比べれば、進駐軍統治下の方がよほどマシではないか……。たぶんそれが、当時の日本人の本音だったのだ。

 しかし日本はその後、急速に戦後の復興を成し遂げる。高度経済成長をへて、世界有数の経済大国にもなった。世界でトップクラスの豊かな国になった。豊かになれば守るものも増える。

 現在の日本人で、「日本は丸腰でもいいじゃないか」「日本が外国に占領されたとしても戦争で大勢が死ぬよりよほどマシだ」と思っている人は少数だと思う。戦争で大勢が死ぬのはご勘弁願いたいが、だからと言っていま持っているものを奪われるのも願い下げだ。丸腰はヤバイ。やはり家には必要最小限の戸締まりが必要だし、いざというときに不審者を追い払うために、木刀や竹刀ぐらいはあってもいいだろう。つまりはそれが、必要最小限の防衛力とういことだ。

 自衛隊は違憲ではない。日本国憲法の第9条は「国際紛争を解決する手段」としての戦争や武力による威嚇を否定しているが、自国の防衛はこれにあたらないので自衛隊の存在は憲法違反にならないのだ。

 日本国憲法はGHQによって作られた草案をベースにしているが、その草案の原型になるメモでは日本の自衛戦争さえ否定させようとしていたという。だが実際の草案を作るGHQのスタッフが、「いくらなんでもこれはやりすぎ」と考えてそれを削除してしまったのだという。つまり日本国憲法は最初から、自衛のための戦争は否定していないのだ。自衛のための戦いがあり得るのであれば、そのために必要な最低限の武力は保有することだって認められる。つまり自衛隊は憲法9条が禁ずるものには該当しない。

 自衛隊の前身となる警察予備隊ができてからすでに65年。その間、日本はずっと上記のような立場で「自衛のための戦力」を保持してきた。ところが最近は「憲法を改正しろ」と主張する人たちすらそれを放り出して、かつての革新勢力が主張していたような「自衛隊は違憲だ」という論を振りかざしている。日本の「保守」はどこに行ってしまったのか?

 これはネット言論がダメだと言っているわけではない。かつて「自衛隊は合憲だ」と言っていたはずの自民党が、自ら「憲法と自衛隊の存在には矛盾がある」などと言っているのだ。半世紀以上も「自衛隊は合憲だ」と言っていたのに、今さら何を根拠に「違憲だ」と言いだしたのか首をかしげるしかない。

 皮肉な言い方をするなら、これは結局「日教組による洗脳」の成果なんだろうと思う。日本人の多くは、政府与党が「自衛隊は合憲だ。憲法違反ではない」と言っても、それを決して信じなかった。子供の頃に受けた「自衛隊は違憲だ」という教えを心の中のどこかに仕舞い込んで、「自衛隊は合憲だというのは政治的なまやかしに過ぎない」と思っていたのだろう。ところが「自衛隊は違憲だ」から「自衛隊を解体しよう」には向かわず、「自衛隊は必要だから憲法を変えよう」に向かうところが30年前とは正反対なのだが……。

 でも繰り返しになるけど、自衛隊はそもそも「合憲」なのだ。憲法9条の枠内で日本の防衛のために存在しているのが自衛隊だという大前提に、まず戻る必要があるんじゃないだろうか。

 自民党もネトウヨの皆さんも、「自衛隊は違憲だ」なんて昔の左翼みたいなことを言うべきじゃない。まがりなりにも「保守」を自認するのであれば、戦後の政権与党が主張してきた「自衛隊は合憲だ」という論に立ち返るべきなのだ。その上で、憲法9条の中にある自衛隊がどんな国際貢献ができるのかを議論すればいい。

 「自衛隊はそもそも違憲だから、今さら集団的自衛権や自衛隊の海外派遣を違憲だと言っても意味がない」と言うのは、あまりにも粗雑で歴史を踏まえない主張だ。歴史を踏まえずに「今この時」だけからものを言うのは、左翼革新勢力やリベラルのやることだ。保守なら保守らしく振る舞うべきだろうに。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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