黒澤映画の最初の1本は?

椿三十郎

 黒澤明の監督作は全部で30本しかない。しかも全作品がほぼ完全な形で現存している。日本の「巨匠監督」の中ではもっとも「完全制覇」が容易な監督だろう。

 幸か不幸か「黒澤映画をまだ1本も観たことがない」という人に、まず最初に何を勧めるべきか? という基準で5本選んでみた(1本は次点)。

 まずいきなりだが『七人の侍』は外してしまった。黒澤映画のみならず戦後日本映画の最高峰とされる作品だが、その頂きはあまりにも高いため、2時間弱で標準化されている映画に慣れ親しんでいる人には息切れするだろう。

 というわけで以下、5作品。

1『椿三十郎』
 黒澤時代劇の中では個人的にこれが一番好き。短いのもいい。この映画を面白くないと言う人はまずいないと思う。黒澤映画の明るさ、楽しさ、快活さを代表する作品。

2『蜘蛛巣城』
 シェイクスピアの「マクベス」を日本の時代劇に翻案した作品だが、黒澤映画の暗さ、重苦しさ、陰鬱さを代表する作品。ラストシーンで主人公が部下に裏切られ、全身ハリネズミのようになって死ぬ場面は壮絶。

3『天国と地獄』
 黒澤明は刑事物を何本か取っているが、その集大成がこれ。映画導入部は長回しを使って舞台劇のように濃密なドラマ空間を作り出し、後半ではカメラが思い切って外に出ていく。この対比の面白さ。

4『隠し砦の三悪人』
 黒澤時代劇の「戦国もの」では『七人の侍』より僕はこちらの方が好き。『スター・ウォーズ』の元ネタとしても有名。これも結構地味なところが好きで、映画序盤で城の階段から捕虜になった雑兵たちがワーッと駆け下りてくる場面とか最高です!

5『生きる』
 主人公を途中で殺してしまい、後半では回想シーンでその後の様子を描くというシナリオの仕掛けにはいつもうならされる。主人公の背後で「ハッピーバスデー・トゥー・ユー」が歌われる場面は徹底して作為的だが、これほど感動的な場面はない。「ゴンドラの唄」よりこっちでしょ!

次点『素晴らしき日曜日』
 黒澤明がまだ「才能あふれる若い映画監督」だった頃の作品で、終戦直後のまだ焼け跡だった東京でロケ撮影されている。若き日の黒澤明の瑞々しさ。しかしこの貧乏っぷりは、今観るとほとんどファンタジーだな。

 10本選ぶなら『赤ひげ』『用心棒』『野良犬』『酔いどれ天使』を加えたい。(やはり『七人の侍』はスルーですが……。)

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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