「健康で文化的な最低限度の生活 2」を読む

健康で文化的な最低限度の生活 2

 柏木ハルコの「健康で文化的な最低限度の生活」2巻がKindle版で出たので読んだ。書籍版は2月に出ているのにKindleでは2ヶ月遅れ。こういうのは同時に出してほしいんだけどなぁ……。

 自治体の福祉課で生活保護担当になったヒロインが、さまざまな事例に出会いながら成長していくという社会派の人間ドラマだ。生活保護を受給する人たちというのはいろいろな意味で追い詰められているわけで、その背景を掘り下げたり、生活保護を受給することに対する忸怩たる思いや葛藤などが丁寧に描かれている。

 生活保護については昨今ひどく風当たりが強く、まるで税金にたかって遊び暮らしているかのような印象を持っている人も多いのではないだろうか。あるいは生活保護受給者の多くが不正受給をしているというイメージも社会に浸透しているのかもしれない。だが「不正受給」の多くは、制度の仕組みがうまく伝わっていないことによる些細なミスであることがおおいようだ。警察沙汰になるような本格的な不正、最初から保護費をだまし取るつもりで行われる悪質な不正はほとんどない。

 今回の2巻では、そうした不正受給をテーマにしたエピソードが含まれている。母子家庭で生活保護を受給している家庭に育った少年は、音楽に出会い、音楽を一緒に楽しむ仲間に出会い、荒れた生活から立ち直る。自分の個人的な夢を追うために、家庭に負担はかけられない。だからバイトをしてギターを買う。CDを買う。誰にも迷惑はかけていない。自分で働いた金で、自分のものを買っただけだ。だがそれが不正受給になる。アルバイト代の相当額を、そっくりそのまま返済しろと迫られる。

 つい先日同じような事例についての裁判が報道された。生活保護を受けている家庭の娘が、自分の修学旅行と大学進学の費用を賄うためにアルバイトをしたところ、それを「収入」とみなされて返済を求められたのだ。貧しい家庭の子供が、他人に頼ることなく自分の力で働こうとする。しかしそれが「不正受給」を招くことになる。

 不正受給は減らすべきだ。しかし保護を受けている家庭は千差万別で、そこにはさまざまな思いが渦巻いている。「不正=悪いこと」だから「悪いことをする人=悪い人」と単純に言えるようなものでもない。今回の第2巻には人間の善意や責任感が、結果として保護費受給の長期化を招く例も出てくる。

 生活保護について書かれた本はたくさんあると思うが、個々の事例を「物語」として提示してくれるこの作品の意義は大きい。著者が丁寧に取材して書いていることが、描写の細部から伝わってくる作品だ。生活保護について何かモノを言いたいと思っている人には、ぜひ読んでほしいと思う。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 読書

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