オトナになりにくい社会

サザエさん

 「ルパン三世」の銭形警部が29歳だという説がある。これ自体は本当かどうかわからないのだが、根拠は1989年に放送されたTVスペシャルだというから、その時に29歳だとすれば生まれたのは1960年か……。ふ〜む。銭形のとっつぁんも僕と同世代の1960’sですか。

 もっとも『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)ではルパンから「昭和一桁」などと揶揄されているので、仮に『カリオストロの城』が映画公開と同じ1979年を背景にしているとすれば、銭形が昭和9年生まれだったとして45歳。この映画は1968年が舞台だという説もあり、もしそれが正しいのなら昭和9年生まれの銭形は34歳になるようだけど……。以上、ご参考までに。

サザエさん一家の場合

 銭形警部の年齢は結局良くわからないのだが、人気アニメの主人公で年齢がはっきりわかっている人たちがいる。それは「サザエさん」の一家だ。フジテレビの公式サイトに掲載されている情報によれば、各キャラクターの年齢は以下のようになっている。

  • フグ田サザエ(24歳)
  • 磯野波平(54歳)
  • 磯野フネ(50ン歳)
  • フグ田マスオ(28歳)
  • 磯野カツオ(11歳)
  • 磯野ワカメ(9歳)
  • フグ田タラオ(3歳)
  • タマ(記載なし)
  • 波野ノリスケ(24〜26歳)
  • 波野タイコ(22歳ぐらい)
  • 波野イクラ(1歳半ぐらい)

 これを見ると、各登場人物たちの人生がいろいろとうかがえて面白い。例えば……

  • サザエとカツオの年齢は一回り以上離れている。
  • サザエさんは21歳でタラちゃんを生んでいるので、結婚したのは二十歳ちょうどかそれ以前である。
  • マスオさんは20代前半でサザエさんと結婚している。
  • サザエさんは波平が30歳、フネ20代後の終わり頃に生まれた子供である(フネが波平よりも年下だと想定した場合)。
  • 現在の感覚だとサザエの結婚はずいぶん早いが、波平とフネの結婚はそうでもない。
  • カツオが生まれたときフネはアラフォー、ワカメが生まれたときは明らかに40歳を越えている。
  • タイコさんは二十歳そこそこでイクラちゃんを生んでいるから、結婚したときは二十歳前だったのかもしれない。

 さらにテレビを見ているとわかるが、波平はまだ会社に勤めている。この頃はサラリーマンの定年が55歳ぐらいかな。公式サイトの情報によれば波平の趣味は囲碁・盆栽・釣り・俳句・骨董品の収集だとか。こうした趣味は年取ってからいきなりはじめることはないので、少なくとも40代の頃からはこうした趣味を持っていたはずだ。

20代でオトナになれた時代

 サザエさん一家の波平さんは立派なオトナである。威厳と貫禄たっぷりの、一家の大黒柱である。だが現在の54歳で、波平さんのような立派な大人がどれだけいるだろうか? 僕はあと5年ぐらいで波平さんと同い年だが、とてもじゃないが波平さんにはなれないと思う。なれっこない!

 現代は年をとりにくい時代になった。誰もが年をとることを拒んで「まだ若い」と思っている。波平さんはもう立派な「老人」もしくは「初老の男」だが、現在は54歳だとまだ「中年」と呼ばないと失礼かもしれない。それだけ「老人」になるのが難しい時代になったのだ。

 これは年齢が若い世代でも同じだ。サザエさんもタイコさんも二十歳前後で結婚して子供を生んでいるが、今は二十歳で結婚したいなどと言えば「早すぎる」と周囲が止めるだろう。

 昔は子供や少年少女と言えば小学生からせいぜい中学生までで、高校生と大学生は青年だった。今でも「青少年」という言葉があるが、これは小学生から高校生ぐらいまでの年齢が範囲だろうか。この場合、高校を卒業して大学生になればもう大人扱いだ。(そのため今でも、大学生になれば飲酒喫煙については大目に見るという社会風潮がある。国でも選挙権を18歳から与えようという議論がある。)

 しかし今はどうだろう。「少年」や「少女」の範囲はだいぶ拡張されて、20代のはじまり頃はまだ少年少女と呼ばれるようになっている。女性は20代ならまだ「女の子」を自称して構わないし、30代に差し掛かっても自分を「女の子」と言う人はいくらでもいる。

オトナになれない大人たち

 男も女もオトナになるのが難しくなっている。サザエさんの世界ではサザエさんもタイコさんも二十歳で「おかあさん」になったし、それより少し年上のマスオさんやノリスケさんは妻と子供を養っていくという責任を背負って生きている。でも今は同年齢の人たちに、それと同じことを求めることは難しい。

 若年層に関して言えば、大人になるために必要な時間が10年ぐらい後ろにずれている気がする。女の人は20代の終わりか30代のはじめに結婚するのが当たり前になった。男も30を過ぎないと結婚なんて考えない。

 年寄りも「中年」の時期が後ろにずれ込んでいる。30代前半まではまだ「青年」のつもりで、40になるといよいよ中年と呼ばれても腹が立たなくなってくる。だがそれから先の「中年時代」が長い。磯野波平さんは50過ぎでタラちゃんが生まれておじいちゃんになり、本人は54歳でそれなりに老いを意識しているだろう。老人とは言わないまでも、初老であることは間違いない。

 だが今は54歳だとまだ初老とは言えない。還暦になっても赤いチャンチャンコを着て孫たちにお祝いしてもらうわけにはいかない。60代はまだ現役だ。老人なんて呼ばないでくれ! だから電車やバスの中で、年寄りに席を譲りにくくなってしまった。席を譲られて、ムッとした顔をしている年寄りを見たことがある人は多いのではないだろうか。

 政治の世界では50代60代でまだ「若手」と呼ばれるそうだ。老人天国で若者の入り込む余地がない。だが今は日本という国全体が、そうした方向に向かっている。昔は二十歳過ぎれば立派なオトナ扱いしてもらえた。でも今は30過ぎまでヒヨッコ扱いだ。

着実に高齢化している日本

 1987年から1994年まで放送されていた「オシャレ30・30」というトーク番組があった。当時30代だった古舘伊知郎と阿川泰子が司会をしながら、30代のゲストを迎えるという「オトナのトーク番組」だ。当時はまだ30代がオトナだった。同じ頃に村上龍がホストになって「Ryu’s Bar 気ままにいい夜」という番組も放送していた。これも当時の村上龍は30代だ。

 だが今はどうだろう。妻夫木聡が出演するビール会社のCMに「大人エレベーター」というシリーズがある。これがスタートしたとき、妻夫木聡は30歳ぐらい。エレベーターに乗って会いに行く大人は40歳以上がほとんどだった。今は40歳以上がオトナだ。1990年代には30代でオトナになれたのに、今はそれが10年後ろにずれて40歳からオトナになっている。

 これが「高齢化社会」ということなのだが、これだと若者は生きにくいだろうと思う。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

オトナになりにくい社会」への1件のコメント

  1. ピンバック: 実写版「サザエさん」をリアル年齢で考える | 新佃島・映画ジャーナル

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中