サイコロ博打必勝法!

サイコロ

 世の中で頻繁に使われている言葉であるにも関わらず、じつはほとんど理解されていないものがある。それは「確率」だ。

 以前ネットで、確率がぜんぜんわかっていない人が「サイコロ博打必勝法」を得々と披露しているのを見て頭が痛くなったことがある。それは以下のようなものだった。


1.サイコロを大量に用意して何度も転がし、各サイコロについて記録を付けておく。

2.サイコロで1〜6の目が出る確率はそれぞれ6分の1だが、実際には出目に偏りがある。サイコロによっては偶数の目ばかりが多く出たり、逆に奇数の目ばかりが多く出ることがある。特定の数の目ばかりが、明らかに多く出るサイコロもある。

3.しかしどのサイコロも最終的に各目の出現率が6分の1になるはずである。そこで以下のようなことが言える。

  • 偶数の目ばかりが偏って出ていたサイコロは、他のサイコロに比べて今後奇数の目が出る確率が高い。
  • 奇数の目ばかりが偏って出ていたサイコロは、他のサイコロに比べて今後偶数の目が出る確率が高い。
  • 特定の目ばかりが集中して出現していたサイコロは、今後その目が出なくなる確率が高い。
  • 特定の目があまり出現しなかったサイコロは、今後その目が大量に出現する確率が高い。

4.こうしてサイコロの持つ出目の偏りがわかっていれば、これを利用してサイコロ博打で大きな利益を得ることができる。

 具体的な例としては、以下のようなサイコロ博打の勝負を考えてみる。

 サイコロを5回振って、偶数の目と奇数の目のどちらが多く出るかを賭ける。サイコロで偶数と奇数が出る確率は半々だが、サイコロを振る回数は5回だから、結果が半々になることはあり得ない。必ず偶数か奇数かどちらかが多く出る。簡単な勝負だ。

 この時「サイコロ博打必勝法」を知っている人間は、事前に複数のサイコロを繰り返し振った中から、例えば「偶数が5回連続で出たサイコロ」とか「奇数が5回続けて出たサイコロ」を勝負の場に持ち込む。

 サイコロで偶数と奇数が出る確率は半々だから、全部で10回サイコロを振れば、偶数が5回、奇数が5回出るはずだ。勝負の前にサイコロを5回振ってそれが全部偶数だったとしたら、次の5回は全部奇数になる。多少の変動があったとしても、確率としては奇数が出る可能性がずっと高い。従って勝負では奇数の目に賭ける。これで勝負に完勝できる。


 以上が「サイコロ博打必勝法」で、アホらしくて本当に頭が痛くなる。でも世の中には同じようなことを考える人が、結構いると思うんだよね……。

 この必勝法がなぜアホなのかというと、3以降の話がでたらめだからだ。サイコロを転がせば本当に常に同じ確率で同じ目が出ると、杓子定規に信じ切っているのがアホなのだ。実際の出目は、さまざまな要素で大きく変動する。

 ルーレットのプロのディーラーは、ほとんど自由自在に自分の望む場所に玉を入れることができる。これは以前日本のテレビ番組で、素人でも徹底的に練習すれば同じことがかなりの確率でできるようになることを紹介していた。だからルーレット賭博では、ディーラーがルーレットに玉を入れてから客が賭けに参加する。客はディーラーが次に何の目を出そうとしているかを探って、そこに賭けるわけだ。ルーレットは偶然性のゲームではなく、じつはディーラーと客との心理戦だ。

 これはサイコロ賭博も同じで、じつはサイの目というのは練習次第でかなり意図的にコントロールできるようになるらしい。「次郎長三国志」の著者村上元三は若い頃、次郎長一家の系列につながるという博徒が、ツボを振る前に「この目を出す」と宣言して必ずその目を出すことができるのを実際に目撃したという。だからやくざ映画を見ればわかると思うが、サイコロ博打で客が賭けに参加するのも、やはり胴元がサイコロを振った後になる。ルーレットと同じで、サイコロ博打も偶然に頼らない心理的駆け引きのゲームなのだ。

 阿佐田哲也(色川武大)の小説「麻雀放浪記」にもサイコロの目を自由自在に操作して、自分の好きな場所から事前に積み込んだ牌を取ってくる場面が何度も出てくる。プロのギャンブラーは何十回も何百回も練習して、自在にサイコロの目を操る。従って「どの目が出るのも6分の1」という前提がそもそも怪しい。

 仮にサイコロの目を意図的に操作しなかったとしても、市販のサイコロというのはそれほど厳密に作られているわけではない。重心の偏りや形状のいびつさなどによって、特定の目が出やすくなったり出にくくなったりすることは十分にあり得る。

 もし特定のサイコロで偶数の目ばかりが出続けるなら、それは「いずれ奇数の目が出続けるようになる」と考える以前に、サイコロの特性として偶数が出やすいのだと考えた方が妥当だ。事前にサイコロを何百回も振って「偶数が出やすい」とわかったら、そのサイコロで勝負するときは素直に偶数の目に賭けた方が勝ちを拾いやすいと思う。

 ではサイコロの出目の偏りがほとんど無視できるような場合はどうだろうか。

 これは確率論としては古典的な問題で、サイコロで特定の目が出る確率が6分の1なら、その確率はそれ以前に何があってもずっと変わらない。例えば3回続けて出目が1だったとすると、次に1が出る確率はいくつになるか? じつはそれも6分の1なのだ。これは常に変わらない。変わらないからこそ、「4回続けて1が出る確率は1,296分の1」などと計算することもできるのだけれど……。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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