『ニュー・シネマ・パラダイス』のオリジナル版について

ニュー・シネマ・パラダイス (1)

 ジュゼッペ・トルナトーレ監督の代表作『ニュー・シネマ・パラダイス』を久々に観た。僕が持っているのは2006年に発売された「ニュー・シネマ・パラダイス・ツインパック」というもので、広く劇場公開された2時間強のバージョンと、その後未公開シーンを加えて3時間弱に再編集したバージョンがそれぞれ1枚ずつDVDに収録された2枚組だ。

 この映画には大まかに3つのバージョンがある。映画完成直後にヨーロッパ映画祭に出品したときは3時間ぐらい。映画祭後も編集作業を続けて、一番最初にイタリアで公開されたのは上映時間2時間35分だった。ところがこれが興行的に大失敗して劇場公開は1週間で打ち切り。その後「長すぎる」という意見を入れて2時間に再編集し、カンヌ映画祭に出品して高い評価を受けた。世界中で公開されて大ヒットしたのは、この2時間バージョンだ。

 「完全オリジナル版」としてDVD発売されている3時間(正確には2時間55分)バージョンは、映画が大ヒットしたことを受けてより長いバージョンをビデオ発売しようという目的で再編集されたもので、基本的な構成はヨーロッパ映画祭に出品したものと同じになっている。ただし映画祭に出品したフィルムそのものではなく、後からそれを再現したものなので細かな編集違いはあるはず。つまりこのバージョンはビデオ発売用の独自バージョンであり、そういう意味での「完全オリジナル版」なのだ。

 日本でDVD発売されていないのは、イタリアで最初に公開された本来の「オリジナル版」だ。Amazon.comで『Cinema Paradiso』を検索するとこの映画のDVDやBlu-rayが山ほどヒットするのだが(権利問題はどうなっているんだ?)、その中にはランタイムが155分と表示されているものが何種類かある。これが正しいのなら、アメリカではイタリア初公開バージョンがDVDソフトとして売られているわけだ。日本で発売されていないのは残念だが、大は小を兼ねるので3時間バージョンを観ればだいたいの様子はわかるということかもしれない。

 しかし『ニュー・シネマ・パラダイス』の「完全オリジナル版」は、ラーメン屋の「全部入り」みたいなもので味わいとしては必ずしもバランスのいいものではないのだ。これはコメンタリーの中で監督自身が認めているが、長くて冗長なところが多い。コメンタリーの中で監督が「このシーンは好きじゃない」などと明言している場面まであるが、それがなぜ残っているのかと言えば、それが一番長い「全部入り」だからだという以外の理由はない。

 この映画の3時間バージョンを「監督の意図をもっとも忠実に反映したバージョン」と考える人は多いだろうが、映画の成り立ちを考えると監督の意図をもっとも忠実に反映しているのは、日本未公開でソフトも未発売の2時間35分バージョンなのだと思う。2時間版は重要なエピソードを欠いた不完全なものだし、3時間版は冗長なところがあって長すぎるのだ。僕は2時間半バージョンを観ていないわけだが、監督のコメンタリーによればそういうことになる。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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