『駅馬車』を観る

駅馬車

 買ったまま本棚の中に積み上げていたDVDが山のようにあるのだが、その中からジョン・フォードの『駅馬車』を引っ張り出してきた。上映時間が1時間半ちょっとなので、仕事の合間に観てもいいかなと思った次第。ずっと昔にNHKの名作映画劇場のような枠で観たことがあるので、話は一応知っている。クライマックスで駅馬車がインディアンの襲撃から逃げるシーンは、アクションシーンの古典としてここだけ何度も観ている。だが改めて作品全体を通して観てみると、いろいろな発見があって面白かった。

 映画の主人公はジョン・ウェイン演じるリンゴ・キッドということになっているが、彼は映画の途中で駅馬車に合流する人物。映画の最初から最後まで通しで出ているのは、冒頭で町から追い出される若い娼婦ダラスと、飲んだくれ医者のブーン。物語の流れとしてはブーンがダラスを見守り、最後にリンゴと共に旅立つのを見送るというものなのだが、ジョン・ウェインの存在感があまりに大きいので中盤から彼が映画を乗っ取ってしまうのだ。

 だがそれがこの映画の魅力になっている。複数の人物が織り成す人生模様が絡まり合うグランドホテル形式の映画だが、この映画の面白さは個々の楽器の音が重なり合ってハーモニーを作り出すアンサンブルではなく、力強いソロパートを他の楽器が盛り上げていく協奏曲だ。映画の途中からソリストとして登場するのがジョン・ウェイン。彼の奏でるソロのメロディの他に、他の楽器もいくつかのモチーフを奏でてはいるが、それは最終的にはソロパートを際立たせることに貢献することになる。

 インディアンの襲撃を逃れた後、ローズバーグの町でリンゴ・キッドは親兄弟の仇であるプラマー兄弟と決闘する。インディアンの襲撃がアクションの面白さだとすれば、この決闘シーンはサスペンスの面白さ。ジョン・ウェインが勝つとわかっていても、そこまでどうたどり着くかに紆余曲折があって楽しませる。ブーンが一度は兄弟からショットガンを取り上げるが、その後に兄弟に加勢する愛人がまたショットガンを投げて寄こすあたりは上手い。兄弟が明らかに緊張して平静を失っている様子を細かく描写しているから、その後の決闘の結末にも観客が納得するのだ。

 リンゴ・キッドは無敵のスーパーヒーローではなく、生身の人間だ。彼を3対1の勝負で勝たせるには、それなりの準備と段取りが必要になる。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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