JEPAセミナー「なぜ電子書籍は嫌われるのか?」

なぜ電子書籍は嫌われるのか

#JEPAセミナー「なぜ電子書籍は嫌われるのか?」

 6月27日(金)に、JEPA主催で「なぜ電子書籍は嫌われるのか?」というセミナーが開かれたので参加してきた。講師は朝日新聞社デジタル本部ビジネス企画開発部の林智彦さん。全体の流れとしては、電子書籍に対する日本国内での評価や評判をざっくり紹介した後、電子書籍の先進国であるアメリカでの現状を紹介し、最後に「じゃあ日本ではどうすべきか」という提言で締めくくるもの。

 面白かったのは第2部のアメリカの電子書籍事情で、アメリカでは電子書籍市場の成長が頭打ちになっているという。電子書籍が一般書籍の市場を完全に置き換えてしまうような話がかつてはまことしやかに語られていたが、そうしたことはまったく起きなかった。まだ多少の増減はあるので今後どうなるかはわからないが、書籍市場全体の中で、売り上げベースの何割かが電子書籍になるというところで落ち着くのだろう。

 電子書籍と紙の本では、紙の本の方が圧倒的に読みやすい。だから電子書籍ユーザーであっても、値段が同じなら紙の本を買いたがる。電子書籍を売るためには、その「読み難さ」をカバーするために値段を少し下げなければならない。電子書籍は印刷代がかからないから安くなるのではなく、モノとして妥当な値付けをしようとすれば、紙の本より安くせざるを得ないわけだ。(ただしアメリカの書籍市場は再販制度による価格の縛りがないので、書店によってはわざわざ「電子書籍より安い本」というコーナーを作っていたりするらしい。)

 電子書籍で読むのに適している本と電子書籍には向かない本があり、軽い小説などは電子書籍向きだが、専門書や純文学は電子書籍に向かないのではないか……という話も。このへんは僕自身の実感とも合っている。僕はKindleを持っているけどほとんど使わない。それは僕があまり小説を読まないからなんだよな。

 そのKindleに代表される電子書籍専用端末は、やはり売れ行きに陰りが出ているようだ。読者の多くはタブレットに移行して、現在Kindleなどの専用端末を持っている人も、次に買い替えるときに新しい専用端末にする意志はあまりないという。このあたりは僕が印象だけで「電子書籍がダメな10の理由」に書いたこととも一致していて、それがデータで立証された形になっている。

 今回のセミナーは講師の話の組み立てがまずくてポイントが見えずらかったのだが、最後に電子書籍作成プラットフォームの開発をしている外国人がゲストとして少し話をし、そこで「日本の出版社は国内の1億2千万人の日本語市場に留まらず、日本語で書かれた豊富なコンテンツを他言語に訳して海外に出て行くべきだ」と言っていたのが印象に残った。

 日本語の本を海外で出版するとなると、これまでは翻訳の手間に加えて、海外の出版社と契約して販売やプロモーションを委託しなければならなかった。海外の販路を自前で持っていないのだから、そうせざるを得なかったわけだ。でも電子書籍はそうではない。自分たちで英訳した本を、アマゾン経由で自分たちで売ることができる。プロモーションだって自分で英語版のWEBサイトを作ればいい。これが全部日本にいながらできるわけだ。そこで評判になれば、海外の版元が「うちで紙の本を作って売りたい」と名乗りを上げてくるだろう。その時はゼロから海外に乗り出すときより、かなり有利な形で販売契約を結べるようになるはずだ。これは出版社にとって、大きなビジネスチャンスになるのではないだろうか。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

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