小津安二郎とサセレシア

CIMG8627

 水道橋の東京ドームシティアトラクションズ(後楽園ゆうえんち)に出かけてきた。構内放送の案内やBGM、アトラクションの音などでたいへん賑やかなのだが、それを無視してiPhoneにコピーしてある「小津安二郎ミュージック・アンソロジー」を聴いていた。お気に入りは斉藤高順が作曲した「サセレシア」やそのバリエーションとなる一連のポルカ。これを聴きながら平成26年の東京ドームアトラクションズを見回すと、そこは昔懐かしい昭和の遊園地に変わってしまうのであった……。

 僕は20年以上前、銀座にあった並木座という名画座で、戦後の主要な小津安二郎作品をだいたいひと通り観ている。そこで流れている曲が斉藤高順の「サセレシア」や、それとほとんど区別がつかない一連の楽曲だった。いつもいつも同じ曲が流れているので、松竹の契約音楽家が松竹映画のどこで使ってもいいように提供しているものなのかと思っていたがそうではない。

 もともと『早春』(1956)のために「『サセパリ』や『バレンシア』のような明るい曲がほしい」という作曲依頼があり、それに合わせて書かれた楽曲なのだ。リズムとか楽曲の構成は「サセパリ」や「バレンシア」とそっくり同じで、要するに完全パクリの「なんちゃってシャンソン」ですね。一流の作曲家は「◯◯みたいな曲」と言われれば、原曲を分析してちゃんとそれ風の曲を作ってしまうのですね。なんだか最近の佐村河内守の新垣隆の話題を彷彿とする話ですが……。出来上がった曲に小津安二郎はとても満足し、「サセパリ」と「バレンシア」を元にした曲ということで、「サセレシア」という呼び名で親しまれるようになった。

 この曲は小津映画の中で、『東京暮色』(1957)や『彼岸花』(1958)でも使われている。だからこの時代の小津作品を続けてみていた僕は、その楽曲流用に気づいたわけだ。まあでもこれは、誰でも気づくと思うよ。

 小津・斉藤コンビの作品ではその後も同じような明るい曲調の「ポルカ」が何度も繰り返し使われるようになり、この時代の小津作品の貴重トーンになっていると思う。僕の場合はそれが「昭和30年代の風景」と結びついて、この曲が聞こえると「昭和だ!」となってしまう。まあ映画に刷り込まれた条件反射みたいなものですね。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 日記

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中