『舟を編む』の凱旋公開

舟を編む

 近所のシネコンで『舟を編む』の凱旋公開をやっていたので観てきた。これは面白い。辞書を作る編集者の話だが、出版社の「使えない営業職」から新人の辞書編集者に大抜擢される松田龍平の手がいい。ページをまさぐる手の表情がじつに色っぽい。

 劇中で宮崎あおいとのロマンスがあったりするのだが、恋が成就した途端に劇中の時間がぽんと12年過ぎてしまうテンポの良さ。ここまでのんびり時間が過ぎていく、そののんびりした風情を楽しんでいたものが、いきなり12年を飛び越える。この大胆さにうなる。そして12年の年月にあったさまざまな出来事を、あえて劇中で語らずに観客たちに想像させる慎み深さ。

 出演者はみんな良かった。主演ふたりも素晴らしいが、脇役たちもいい。特に辞書の監修者を演じた加藤剛。この俳優の生真面目な持ち味が、辞書作りに命を削るように仕事をする老国語学者のキャラにばっちりはまっている。オダギリジョーと池脇千鶴のカップルも面白かったし、下宿のおばさんを演じた渡辺美佐子、辞書編集部の古参契約社員を演じた伊佐山ひろ子、先輩編集者の小林薫、みんな良かった。物作りって素晴らしい。そして本はすごい。本好きにはたまらん映画だと思う。

 本日2本目の試写は京橋に移動して『百瀬、こっちを向いて。』。高校時代の苦い初恋の思い出を、大人になった主人公が回想するという青春ラブストーリー。15年前の出来事と現在の出来事が交差していくのだが、主人公の現在にとりたてて大きな事件が起きるわけではないので、脚本の構成はそれほど複雑なものになっていない。しかし淡々とした現在が、途中で何度かグラリと揺らぐ場面がある。ここにゾクゾクするような映画のスリルがある。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中