「失踪日記2 アル中病棟」を読む

アル中病棟 図書館に予約していた吾妻ひでおの「失踪日記2 アル中病棟」と、来住英俊神父の「『ふしぎなキリスト教』と対話する」が届いたので取りに行く。まだドーキンスの「神は妄想である―宗教との決別」を読んでいるところだし、他に仕事もある。まずはそれらを片付けてから……と思ったのだが、手もとにあれば読みたくなるのが人情。結局「アル中病棟」だけササッと読んでしまった。

 2005年に出た「失踪日記」の続編だ。「失踪日記」は三部構成になっている本で、第一部は仕事から逃げ出してのホームレス生活、第二部はやはり仕事から逃げ出しての二度目のホームレス生活と、巡り合わせでガス配管の仕事をしていた時代の話、第三部はアルコール依存症で病院に入院していた時の話になっている。「失踪日記2 アル中病棟」はタイトルからもわかる通り、「失踪〜」の第三部の続編であり、拡張版だ。病院に入院するいきさつから退院までが時系列に描かれているので、扱っている時間としては「失踪日記」と重なり合う部分も多く、登場するキャラクターも継承している。(実話なんだから当たり前だ。)しかし描かれているエピソードは重ならないように配慮されているのが、著者のプロ意識だろう。

 「失踪日記」で著者が三頭身のギャグタッチに描かれていたのに対して、この「アル中病棟」では四頭身になっている。リアルな絵というわけではないが、こうして人物のプロポーションが生身の人間に近づくことで、作品中のエピソード描写も現実に近づいてくるのだ。登場人物が多い割には各人物がしっかり描き分けられているし、それぞれ個性豊かなキャラクターとして魅力的に描かれている。困った人や厄介な人や嫌な人も、それぞれに個性的で魅力たっぷりなのだ。ナースや女性患者など女性キャラクターが、吾妻タッチでかわいく描かれているのもいい。

 基本的にギャグやユーモアたっぷりで楽しく読めるのだが、その合間にゾッとするような厳しい現実が垣間見えるところにこの作品の凄味がある。アル中患者の多くが治らない。入院中に酒を断っていても、退院して1年もするとその8割が酒に舞い戻って再入院したり、行方不明になったり、死んだりしているそうだ。

投稿者: 服部弘一郎 カテゴリー: 読書, 日記

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